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「A組、か。……こっちの廊下だろうか」
ふと、後ろから落ち着いた声が聞こえ、まふゆは振り返った。
さきほど壇上で答辞を述べていた、赤髪の青年……レオンハルトが立っていた。彼はまふゆの持つクラス分けの羊皮紙を一瞥すると、にっと笑ってみせる。
「あんたもA組か。俺もだ。よかったら一緒に行かないか?俺はレオンハルト・アルヴァレイン。よろしくな」
そう言って、彼は屈託のない笑みを浮かべて手を差し出した。
その隣には、彼とは対照的に静かな佇まいの、白銀の髪を持つ青年が立っている。兄と同じ色の青緑の瞳をしているが、どこか憂いを帯びたような、柔らかな表情だ。
「……僕はセリウス・アルヴァレイン。兄がお世話になります。僕もA組です」
セリウスと名乗った青年は、軽く会釈をする。その視線が、まふゆの白い髪と肌に一瞬留まったように見えた。
「アルビノエルフ、だよね?珍しいな。実物を見るのは初めてだ」
セリウスがそう呟くと、レオンハルトが「こら、セリウス。ジロジロ見るもんじゃない」と軽く弟の頭を小突いた。
「あ、はい。うちは水鏡まふゆいいます。よろしゅう」
「ミカガミマフユ……?変わった名前だな」
レオンハルトは少し首を傾げたが、すぐに快活な笑みを浮かべて差し出した手を軽く振る。
「ああ、よろしくな、まふゆ。困ったことがあったら何でも言ってくれ。同じクラスのよしみだ」
その言葉に、隣にいたセリウスが小さくため息をついた。
「兄さん、初対面の相手に馴れ馴れしいよ。……まふゆさん、ごめん。兄はこういう性格なんだ。改めて、これからよろしく」
セリウスは丁寧にお辞儀をする。しかしその視線は、どこか探るようにまふゆに向けられていた。ハーフエルフである彼は、希少種であるアルビノエルフに対して複雑な感情を抱いているのかもしれない。
「さ、行こうぜ。教室の場所、こっちで合ってると思うんだ」
レオンハルトはそう言って、二人を促すように歩き始めた。新しい学園生活が、今まさに始まろうとしていた。




