表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第二話 少女は初めてのクエストに挑戦する
29/173

2-11




「えっ、あ、またクイズや……!」


木箱に刻まれた新たな謎かけを読んで、まふゆは思わず声を上げた。さっきの図書館での一件が蘇り、緊張と期待で胸がとくんと鳴る。


「『満ちては欠け、欠けては満ちる』……?『万物を映す鏡』、ねぇ……」


レオンハルトが腕を組み、唸るように謎の言葉を反復する。その真剣な表情は、戦いの時とはまた違う、知的な鋭さを感じさせた。


「姿を持たない鏡……。しかも満ち欠けするなんて、そんなものあるのかしら?」


シャノンが首を傾げ、鋭い爪の先で自身の顎をこする。猫族の彼女にとっても、この謎は一筋縄ではいかないようだ。


「うーん、なんだろー?わかった!『人の心』!人の心って満たされたり欠けたりするし、相手を映す鏡って言うじゃん!」


リリアが自信満々に手を挙げて答える。その答えに、セリウスが穏やかに微笑みながら首を横に振った。


「面白い答えだね、リリア。でも、どうやって『人の心』をこの箱に捧げるんだい?」

「あ……そっかぁ。捧げるって言われても、形がないもんね……」


リリアはしょんぼりと肩を落とす。


「『捧げる』ってことは、何か物理的なものをこの箱に入れる……ということだろうか」


セリウスが木箱の構造を注意深く観察する。しかし、何度見ても鍵穴や投入口のようなものは見当たらない。




(満ちては欠け、欠けては満ちる……姿を持たない鏡……)


まふゆも皆と一緒に、必死に頭を働かせる。

夜空に浮かぶ月……?

でも、どうやって月を捧げればいいんだろう。それに、月は万物を映す鏡とは少し違う気がする。


鏡……鏡……。さっきのヒントも『水鏡』だった。




(水……?)


その考えが頭にひらめいた瞬間、まふゆはハッとして、東屋を囲む広大な湖に目を向けた。


きらきらと光る湖面。風が吹けば波立ち、静かな時には空や自分たちの姿をはっきりと映し出す。そして、雨が降れば水位は上がり、日照りが続けば干上がることもあるだろう。


「……あの、もしかして……」


まふゆがおずおずと口を開いた。その小さな声に、考え込んでいた全員の視線が一斉に集まる。


「どうした、まふゆ。何か分かったのか?」


レオンハルトが期待のこもった眼差しを向ける。


「うん……あんな。この謎の答えって、もしかしたら『水』なんやないかなって……」


まふゆは皆の顔を交互に見ながら、自分の考えをそっと口にした。


「水は、器によって形を変えるから『姿を持たない』し、湖みたいに『万物を映す鏡』にもなる。雨が降れば『満ちて』、蒸発すれば『欠ける』……。それに、『捧げる』って言っても、この湖からなら、すぐに……」


そこまで言って、まふゆは自分の両手を見つめた。

この手で水をすくい、箱にかければいいのかもしれない。




まふゆの言葉に、皆の表情が驚きから感心へと変わっていく。


「……なるほど、水か!」


セリウスがポンと手を打った。


「確かにそれなら、全ての条件を満たしている。それに、『水鏡に映る白亜の塔』というヒントとも繋がるね」

「すっげえじゃねえか、まふゆ!よく気づいたな!」


レオンハルトがくしゃりとまふゆの頭を撫でる。その大きな手が少し乱暴で、でもとても優しくて、まふゆは顔が熱くなるのを感じた。


「ミカゲっちもそう思わない?まふゆん、すごいでしょ!」


リリアが隣のミカゲの腕を揺する。


「……ああ」


ミカゲは短く肯定すると、じっとまふゆを見つめていた。その感情の読めない瞳の奥に、確かな信頼と、そして何か別の熱い光が灯っているように見えた。


「じゃ、じゃあ……うち、やってみるわ」


皆の視線に少し照れながらも、まふゆは意を決して湖に近づき、透き通った冷たい水をそっと両手ですくい上げた。


そして、木箱の前まで戻ると、静かに息を吸い込み、その手にすくった「答え」を箱の上へとゆっくりと注いだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ