19-2
レオンハルトとセリウスの言葉に、まふゆの心は安堵と罪悪感でぐちゃぐちゃにかき混ぜられた。
痛々しい包帯姿のアリスと、その傍らで石像のように動かないミカゲを見つめ、まふゆは唇を噛みしめる。
自分の非力さが、あの小さな少女に無茶をさせてしまったのだ。
「……っ」
まふゆが身じろぎした、その微かな気配を捉えたのだろうか。
壁に寄りかかっていたミカゲの瞼が、ゆっくりと持ち上がった。その感情の読めない瞳が、ベッドの上で上半身を起こしているまふゆの姿を捉える。
次の瞬間、今まで彫像のように静かだったミカゲが、椅子を蹴立てる勢いで立ち上がった。
「!」
レオンハルトとセリウスが驚いて目を見開く。
ミカゲはアリスの眠るベッドを回り込み、一切の無駄がない、しかしどこか切迫した動きでまふゆのベッドへと駆け寄った。
彼が動いたことで、黒い装束から微かな潮の香りが立ち上る。
「まふゆ!」
間近で呼ばれた自分の名前に、まふゆはびくりと肩を震わせた。
ミカゲはベッドのすぐ脇で膝をつくと、まふゆの顔を覗き込むようにして、その表情を食い入るように見つめた。
その瞳には、普段の彼からは想像もできないほどの焦燥と……安堵の色が、確かに浮かんでいた。
「……ミカゲ……」
「体は。どこか痛むか。意識ははっきりしてるか」
矢継ぎ早に、しかし抑えられた声で問いかけられる。彼はまふゆに触れることを躊躇うように、シーツの上で固く握られた彼女の拳のすぐそばで、自分の手を彷徨わせていた。
「う、うちは大丈夫……それより、アリスさんは……!?」
「あいつは魔力を使いすぎただけだ。命に別状はない。それより、あんたは」
ミカゲは言葉を切り、ぐっと唇を引き結ぶ。彼の視線が、まふゆの顔から首筋、そしてシーツに隠れた体へと、何か異常がないかを確認するように動く。
その執拗なまでの眼差しに、まふゆは戸惑いを隠せない。
「ほんまに、大丈夫やから……。ミカゲも、ずっとここに……?」
「……あんたが目を覚ますまで、離れるわけにはいかない」
当たり前のことのように、彼はそう言った。その声には、有無を言わせない響きがあった。
それは単なる心配という言葉では片付けられない、もっと深く、根源的な執着を感じさせるものだった。
彼は、まふゆが失われる可能性を、心の底から恐れていたのだと、その瞳が雄弁に物語っていた。




