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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十八話 はじめての臨海学校-後編-
222/237

18-5




「やったあ!!」


思わず、まふゆの喉から歓声がほとばしった。


岩場の上に横たわる、信じられないほど大きな魚。それはもはや魚というより、伝説に謳われる海獣の子供のようだった。

太陽の光を浴びて虹色にきらめく鱗は、生命の力強さに満ち溢れている。


びちびちと最後の抵抗を見せる巨体を前に、アリスはその場にへたり込んだ。


小さな肩が大きく上下し、額には玉の汗が光っている。しかし、その顔は疲労よりも、成し遂げたという達成感と興奮で紅潮していた。

薄青い瞳は、自分が釣り上げた獲物を、信じられないといった様子で見つめている。


「……アリスが、釣った……」


ぽつり、と。アリスの唇から、驚きと喜びが入り混じった声が漏れた。


その小さな背中を支え続けていたミカゲは、静かにアリスから手を離し、一歩下がる。

彼の黒い装束もびしょ濡れで、額からは汗が流れ落ちていたが、その表情はいつもの無感動な仮面を保っている。


だが、その瞳の奥には、ほんのわずかに、アリスの健闘を称えるような穏やかな光が宿っているようにまふゆには見えた。




「すごい、すごいわアリスさん!ミカゲも!」


まふゆは二人のもとに駆け寄り、まずはへたり込んでいるアリスの隣にしゃがみこんだ。


「よう頑張ったなあ!ほんまにすごい!」


そう言ってアリスの頭をわしゃわしゃと撫でると、アリスはくすぐったそうに身を縮こまらせながらも、嬉しそうに目を細める。


「……うん。ミカゲが、手伝ってくれたから」

「せやな!二人とも、最高のコンビやったわ!」


まふゆが笑顔でミカゲを見上げると、彼はふい、と視線を逸らし、濡れた前髪を無造作にかき上げた。


「……そうか」


素っ気ない言葉とは裏腹に、その横顔はどこか誇らしげにも見える。

まふゆはくすくすと笑いながら立ち上がり、改めて巨大な魚を見下ろした。




「それにしても、ほんまに大きい……これ、お昼に焼いて食べたら美味しそうやなあ」


まふゆがそんなことを言うと、アリスの目がきらんと輝いた。


「……食べる?」

「うん、食べよ!みんなで食べたら、もっと美味しいやろ!」


アリスのこくりと頷く姿に、まふゆの胸は温かいもので満たされていく。


臨海学校に来てから、アリスの世界が少しずつ、しかし確実に広がっている。


初めて見る海、初めての花火、そして、初めて自分で釣り上げた大きな魚。

その一つ一つが、アリスの中に確かな思い出として刻まれていくのが、まふゆには手に取るようにわかった。


夏の太陽の下、三人と一匹の巨大な魚。

それは、忘れられない夏の記憶の、輝かしい一ページとなった。




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