18-3
夏の陽光が海面に反射し、無数のダイヤモンドのようにきらきらと輝いている。
穏やかな時間が流れる中、三人はただ黙々と、しかし心地よい一体感に包まれながら釣糸を垂らしていた。
まふゆは、隣でミカゲの教えを忠実に守り、小さな背中を丸めてじっと水面を見つめるアリスの横顔を微笑ましく眺めていた。
(うちら、昨日の夜からずっと一緒……)
まるで雛鳥が親を追うように、アリスはまふゆや、そして意外にもミカゲのそばを離れようとしない。その健気さが、まふゆの胸を温かくする。
その、静寂を破ったのは突然のことだった。
「……っ!」
アリスが持っていた小さな釣竿が、まるで生き物のようにしなり、ぐんっ、と大きく海面へと引き込まれたのだ。
突然の強い力に、アリスの小さな体も前のめりによろめく。
「わっ、アリスさん!」
まふゆが叫ぶより早く、アリスの隣にいたミカゲが動いた。
彼は瞬時にアリスの背後へと回り込み、その小さな体を支えながら、アリスが握る釣竿ごと自分の手で覆うように掴む。
「……!落ち着け。竿を離すな」
ミカゲの低く、しかし切迫した声が響く。
アリスはこくこくと必死に頷くが、竿は今にも海に引きずり込まれそうなほど、激しくしなっていた。
水面下で、とてつもない何かが暴れているのが伝わってくる。
「すごい引きや……!な、何がかかったんやろ!?」
まふゆも慌てて自分の釣竿を岩場に置き、二人のもとへ駆け寄った。
ミカゲはアリスを背後から抱きかかえるような体勢で、ぐっと腰を落として竿の引きに耐えている。
「……大物だ。アリス、俺の合図で、ゆっくりと竿を立てるんだ。できるか」
「……うん……!」
アリスは小さな歯を食いしばり、ミカゲの言葉に力強く頷いた。その青い瞳には、恐怖ではなく、未知への挑戦に立ち向かう強い光が宿っている。
ミカゲがアリスの小さな手に自分の手を重ね、力を込める。二人の力が、一本の釣竿に集約されていく。
「……今だ!」
ミカゲの号令と共に、アリスは渾身の力で竿を立てた。
ぎりり、と釣糸が軋む音が鳴り響き、水面が大きく泡立った。
その瞬間、銀色の巨体が水しぶきと共に空中に躍り出る。
「うわぁっ!?」
それは、まふゆが見たこともないほど大きな魚だった。太陽の光を浴びて、その鱗は虹色に輝いている。
静かだった岩場に、アリスとミカゲの格闘が始まった。




