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中央棟から少し離れた場所に、その建物は静かに佇んでいた。
古びてはいるが、歴史の重みを感じさせる壮麗な石造りの建築物。ここが、王立特異能力者統合学園が誇る大図書館だ。
「わぁ……すごい……」
重厚な樫の扉を押し開けた瞬間、まふゆの口から感嘆のため息が漏れた。
吹き抜けになったホールは、教会の聖堂のように天井が高い。
壁という壁が、床から天井まで続く巨大な本棚で埋め尽くされており、膨大な数の書物が整然と並べられている。
古い紙とインクの混じった独特の匂いが、静寂に満ちた空間を支配していた。
ステンドグラスから差し込む色とりどりの光が、空気中を舞う細かな埃をきらきらと照らし出している。
「こりゃすげえ……国の書庫より大きいかもしれねえな」
レオンハルトが圧倒されたように呟く。
「静かにしなよ、兄さん。ここは図書館だぞ」
セリウスが呆れたように注意するが、彼自身もその蔵書の数に目を奪われているようだった。
「うわ〜!天井まで本がいっぱ〜い!一番上の本、どうやって取るんだろ〜?」
リリアは好奇心いっぱいにきょろきょろと辺りを見回している。
「……静かにして。声が響く」
シャノンが小声で皆を咎めるが、その金色の瞳は子供のように輝いていた。
「…………」
ミカゲは何も言わず、ただ静かにホール全体を見渡している。その視線は、この場の構造や人の配置を瞬時に把握しようとしているかのようだ。
「……で、『最も古き賢者の足元』、やったよね?」
まふゆはひそひそ声で、最初のヒントを皆に確認する。
「ああ。入り口の近くに像か何かがあるはずだ。手分けして探すか?」
レオンハルトが提案しかけた、その時。
「……あっちだ」
ミカゲがホールの右奥、薄暗い一角を指差した。そこには、他の場所とは少し違う、ひときわ荘厳な装飾が施された書架が並んでいる。
「ミカゲっち、なんでわかったの?」
リリアが不思議そうに尋ねる。
「……あそこだけ空気が違う。古い魔力が澱んでいる」
彼の言葉に、セリウスがはっとしたように頷いた。
「確かに……言われてみれば、あの一角だけ空気が重い。禁書区か、あるいはそれに近い特別な区画なのかもしれない」
「よし、行ってみようぜ……!」
レオンハルトが声を潜めながらも、わくわくした様子で歩き出す。
六人は足音を忍ばせ、ミカゲが指し示した場所へと向かった。そこには果たして、何が待っているのだろうか。
まふゆはごくりと唾を飲み込み、皆の後に続いた。




