18-1
臨海学校の二日目は、穏やかな晴天と共に幕を開けた。
窓から差し込む朝の光が、部屋の中を柔らかく照らし出す。
鳥のさえずりと、遠くから聞こえる規則正しい波の音が、心地よい目覚まし時計の代わりだった。
「ん……」
まふゆは、柔らかな布団の中でゆっくりと目を覚ました。隣を見ると、アリスがまだすうすうと安らかな寝息を立てている。
その無防備な寝顔は、昨夜の出来事を思い出させ、まふゆの口元に自然と笑みを浮かばせた。
(よう寝とるなあ……)
昨夜、部屋に戻ってからも、アリスはまふゆのそばを離れようとはしなかった。
結局、一つのベッドでぴったりとくっついて眠ることになったのだ。子供のような体温が心地よく、まふゆもいつの間にか深い眠りに落ちていた。
そっとベッドを抜け出し、まふゆは窓辺に立って大きく伸びをする。新鮮な潮風が、浴衣の隙間から入り込み、眠気を優しく吹き飛ばしてくれた。
「ふあ……ええ天気や」
きらきらと輝く海面を見つめながら、今日の予定に思いを馳せる。
確か、午前中は自由行動で、午後は特別授業が組まれているはずだ。
(せっかくやし、またみんなで海で遊ぶんもええなあ)
そんなことを考えていると、背後で布団がもぞもぞと動く気配がした。
振り返ると、アリスがゆっくりと体を起こし、眠たげな目でまふゆを見つめている。
「……まふゆ」
「おはよう、アリスさん。よう眠れた?」
こくり、とアリスが頷く。まだ完全に覚醒していないのか、その動きは少しだけ緩慢だった。
「お腹すいたやろ?顔を洗って、朝ごはん食べに行こか」
「……うん」
まふゆはアリスの手を取り、着替えを済ませると、朝食が用意されている食堂へと向かった。
食堂はすでに多くの生徒で賑わっており、焼きたてのパンの香ばしい匂いが漂っている。
「お、まふゆ!アリス!こっちだ!」
食堂の窓際の席で、レオンハルトが大きく手を振っていた。
そのテーブルにはすでにセリウス、リリア、シャノン、そしてミカゲも揃っている。
「みんな、おはようさん」
「おはよう、まふゆん、アリリン!」
「……おはよ」
リリアが元気に挨拶を返し、シャノンは眠そうに欠伸をしながら呟いた。
まふゆはアリスと一緒にトレーに朝食を乗せ、みんなの待つテーブルへと向かう。
「それで、午前中はどうする?午後からは授業だが、それまで時間があるぞ」
レオンハルトがパンをかじりながら、全員に問いかけた。
「あーしは買い物行きたいなー!この辺にしかない貝殻のアクセサリーとか売ってるお店があるんだって!」
「あたしは部屋でゆっくりしてる。昨日ではしゃぎすぎて疲れたわ」
リリアとシャノンは、それぞれの予定を口にする。
「僕も少し読みたい本があるから、部屋で過ごそうかな」
セリウスも穏やかに言う。
「じゃあ、うちはアリスさんと……」
まふゆが言いかけると、それまで黙ってスープを飲んでいたミカゲが、ぽつりと呟いた。
「……釣り」
「え?」
「この辺りは、珍しい魚が釣れるらしい」
ミカゲの意外な提案に、その場の全員が少し驚いた顔をした。




