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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十七話 はじめての臨海学校-中編-
212/237

17-5




バーベキューの熱気と賑わいがひと段落し、心地よい満腹感と共に夜風が頬を撫でる頃。


学園の技術部が誇る一大イベントの始まりを告げるアナウンスが、サイト全体に響き渡った。




『これより、技術部特製!夏の夜空を彩る、手作り打ち上げ花火を開始します!』


その声に、あちこちで歓声が上がる。

生徒たちは一斉に空を見上げやすい浜辺の方へと移動し始めた。


「花火や!ついに始まるんやな!」


まふゆは期待に胸を膨らませ、立ち上がった。その菫色の瞳は、星空よりもきらきらと輝いている。


隣のアリスも、まふゆの浴衣の袖を握りしめながら、何が始まるのかと興味深そうに空を見上げていた。


「手作りとは大したものだな。ドワーフの連中か?」


レオンハルトが感心したように言う。


「だろうね。彼らの技術力は目を見張るものがある」


セリウスも同意した。


その時、リリアが浜辺の一角を指さして、嬉しそうに声を上げた。


「あ、あれあーしの友達!」


彼女が指さす先には、数人の生徒に混じって、一人の小柄なドワーフの女の子がいた。

彼女は大きなゴーグルを額に上げ、誇らしげに胸を張って打ち上げ筒の準備をしている。


「へえ、あの子が。すごいなあ、あんな大きな花火を作るなんて」


まふゆが感心して見つめる。




やがて、準備が整ったのか、ドワーフの女の子が空に向かって高らかに叫んだ。


「点火ァ!」


ヒュルルルル……という、か細い音が夜の静寂を切り裂く。

全員が息を飲んで、漆黒の空に吸い込まれていく小さな光の尾を見守った。


そして────




ドンッ!




空の一点で、光が大輪の花を咲かせた。


赤、青、緑。色とりどりの光の粒子が、夜空いっぱいに広がり、きらきらと降り注ぐ。


「わあ……!」


まふゆは思わず声を漏らした。

その光は、水面に映り込み、世界を幻想的な色で染め上げる。


隣のアリスも、その大きな薄青い瞳に生まれて初めて見るであろう壮大な光景を映し込み、微かに口を開けていた。


「……きれい」


ぽつりと、アリスが呟く。

その小さな声に、まふゆは自分のことのように嬉しくなり、アリスの肩を優しく抱き寄せた。


「ほんまやな。すっごい綺麗や」


次々と打ち上がる花火。

菊、牡丹、柳。様々な形の花が、夏の夜空というキャンバスに描かれては消えていく。


その儚くも美しい光景に、誰もが言葉を失い、ただただ見惚れていた。


レオンハルトもセリウスも、普段の立場や喧騒を忘れ、ただ一人の若者として空を見上げている。


シャノンも、不満げな顔はどこへやら、その金色の瞳に感嘆の色を浮かべていた。


リリアは「すごーい!がんばれー!」と自分の友達に声援を送っている。


そして、ミカゲは。

彼は花火には目もくれず、その光に照らされるまふゆの横顔を、ただじっと見つめていた。


喜びと感動にきらめく菫色の瞳。ほんのり上気した白い頬。花火の光を受けて輝く白髪。

その全てを、自身の記憶に焼き付けるかのように。




ドン! ドン!と、ひときわ大きな花火が連続して打ち上がる。

その轟音に、アリスの肩がびくりと震えた。


「大丈夫やで、アリスさん。大きな音がするだけやから、怖ないよ」


まふゆが優しく背中を撫でてやると、アリスはこくりと頷き、再び空を見上げた。その手は、まだ固くまふゆの浴衣を握りしめている。

その様子を、ミカゲの黒い瞳が静かに捉えていた。


束の間の饗宴。

消えては咲く光の花々が、臨海学校の夜を、忘れられない思い出として彩っていく。


まふゆは、この光景と、隣にいる仲間たちの温もりを、決して忘れないだろうと強く思った。




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