17-4
夜の帳が完全に下り、空には満天の星が瞬き始める頃。
保養施設の裏手に広がるバーベキューサイトは、ランタンの温かい光と生徒たちの賑やかな声で満ち溢れていた。
「すごいご馳走やあ……!」
まふゆは、テーブルの上に広げられた豪華食材の数々に目を輝かせた。
昼間の死闘の末に手に入れた戦利品──霜降りの見事な牛肉、色鮮やかな野菜、そして見たこともないような大きな魚介類。それらが所狭しと並べられている。
「はっはっは!俺たちの手で勝ち取ったんだ、当然だろう!」
レオンハルトが上機嫌で肉の塊を網の上に乗せる。じゅわっ、という音と共に、食欲をそそる香ばしい匂いが立ち上った。
「兄さん、少し火が強すぎる。肉が焦げてしまうよ」
「なに、これくらいが美味いんだよ!」
セリウスが冷静に指摘するが、レオンハルトは豪快に笑い飛ばす。そんな二人のやり取りも、今夜は心地よいBGMのようだ。
「はい、まふゆん、アリリン!お肉焼けたよー!」
リリアが焼き加減ばっちりの肉をトングで掴み、まふゆとアリスの皿に置いてくれる。
「あんたたち、野菜も食べなさいよ!」
その隣では、シャノンがぶつぶつ言いながらも、ピーマンや玉ねぎを丁寧に焼いていた。
「ありがとう、リリア!シャノンも!」
まふゆは熱々の肉を頬張り、その柔らかさと肉汁の旨味に目を丸くした。
「んー!おいひいー!」
昼間の疲れが吹き飛ぶような美味しさに、自然と笑みがこぼれる。
アリスも、まふゆの隣でおずおずと肉を口に運んだ。そして、小さくこくりと頷く。その表情は乏しいままだが、普段より少しだけ、その瞳が輝いているように見えた。
少し離れた場所では、ミカゲが一人、黙々と串に刺さった魚を焼いていた。
彼は賑やかな輪に加わることはしないが、拒絶しているわけでもない。ただ、静かにそこに存在している。
彼が焼いた魚は、絶妙な塩加減で、皮はぱりっと、身はふっくらとしていた。まふゆが「ミカゲ、そのお魚おいしそうやな」と声をかけると、彼は無言で焼き上がった一本をすっと差し出してくれた。
「おおきに」
その不器用な優しさが嬉しくて、まふゆは満面の笑みでそれを受け取った。
波の音、虫の音、弾ける焚き火、そして仲間たちの笑い声。
全てが混ざり合い、夏の夜の特別なシンフォニーを奏でている。
戦闘の緊張も、日常の喧騒も、今は遠い。ただ、美味しいものを囲み、大切な仲間たちと過ごす、かけがえのない時間。
まふゆは、みんなの顔をゆっくりと見渡した。
楽しそうに肉を焼くレオンハルト。
呆れながらも兄を手伝うセリウス。
女子たちと甲斐甲斐しく食材を配るリリア。
不器用ながらもみんなの世話を焼くシャノン。
静かに佇みながらも、確かにここにいるミカゲ。
そして、隣で少しずつ世界を味わっているアリス。
(ああ、幸せやなあ……)
心の底から、そんな思いが湧き上がってくる。
この時間が、ずっと続けばいいのに。
まふゆは夜空を見上げ、流れ星に祈るように、そっと目を閉じた。




