16-11
激闘の熱が冷めやらぬ砂浜に、ローゼリアの解放を告げる声が響き渡る。
先ほどまでの死闘が嘘のように、生徒たちの歓声が夏の空に弾けた。
魔物が消え去った砂浜で、まふゆたち七人は、しばし呆然と立ち尽くしていた。
勝利の安堵、そして手に入れた豪華食材。しかし、それ以上に、全員で危機を乗り越えたという確かな達成感が、彼らの胸を満たしていた。
やがて、誰からともなく、七人は自然と顔を見合わせた。これからどうするのか、言葉にしなくても皆の心は一つだった。
ただ一人を除いては。
「そらもちろん……海で遊ぶやろ!」
まふゆが、太陽のように明るい笑顔で高らかに宣言した。
その声には、先ほどの戦いの疲労など微塵も感じられない。初めて見る雄大な海を前に、彼女の心はもう冒険のことでいっぱいだった。
「さんせーい! あーし、浮き輪持ってきたんだー!」
リリアがぴょんぴょんと跳ねながら賛同する。
「ははっ、いいな! ひと泳ぎして、腹を空かせるか!」
レオンハルトも豪快に笑い、セリウスもやれやれと肩をすくめながらも、その表情は穏やかだ。
アリスは、まふゆの隣でこくりと頷いた。彼女もまた、きらめく水面をじっと見つめている。
しかし、その中で一人だけ、シャノンの顔は露骨に曇っていた。
「……あたしはパス。部屋で休んでるわ」
ぷいっとそっぽを向き、一人だけ踵を返そうとするシャノン。
水が苦手な彼女にとって、海で遊ぶという選択肢はあり得ないのだろう。その強がりな背中に、まふゆは悪戯っぽく笑いかけた。
「えー、ええのん?シャノン。せっかく来たのに、もったいないで?」
「うるさい!別に遊びに来たんじゃないんだから!」
「でも、さっきの戦い、シャノンが一番かっこよかったで?あの素早い動き、猫族ならではやんなあ」
「……っ!そ、それは……当然でしょ!」
まふゆの屈託のない称賛に、シャノンの耳がぴくりと動く。まんざらでもない様子が、その強気な態度とは裏腹に尻尾の揺れに現れていた。
「なあ、シャノン。水に入らんでもええから、一緒に浜辺にいよ?みんなでおったら、きっと楽しいで」
まふゆが手を差し伸べる。その菫色の瞳は、どこまでも優しく、真っ直ぐだった。
シャノンはしばらく逡巡するように俯いていたが、やがて小さな声で「……別に、あんたがそこまで言うなら、付き合ってあげなくもないけど」と呟いた。
その不器用な返事に、仲間たちの間に温かい笑いが広がる。
夏の太陽が、彼らの絆をより一層強く照らし出しているかのようだった。




