16-8
目の前で繰り広げられる、あまりにも唐突な戦闘。
ミカゲが魔物の巨大なハサミを受け止め、火花が散る。
その光景は、数分前まで貝殻拾いに興じていた平和な時間とはまるで地続きとは思えなかった。
リリアの悲鳴、レオンハルトの怒声、そして魔物の不気味な咆哮が、夏の砂浜に不協和音となって響き渡る。
恐怖に震えるアリスを背中に庇いながら、まふゆの頭は必死にこの状況を理解しようと回転していた。
(宝箱から魔物が……?なんで?授業のはずやのに……)
普通に考えれば、教師たちの想定外の事故。あるいは、何者かの悪意ある罠。
しかし、まふゆの思考は、そのどちらでもない、もっと単純で前向きな結論へと飛びついた。
────そうだ、これはきっと、そういうルールのゲームなんだ。
「も、もしかしたらこの魔物を倒して食材を手に入れるんかもしれへん!」
まふゆは、震える仲間たちを鼓舞するように、わざと明るい声で叫んだ。
「ま、まふゆ!?本気で言ってるのかい!?」
その突拍子もない言葉に、セリウスが驚愕の声を上げる。
「だって、そうやないと辻褄が合わへんやん!これもきっと、ガレオス先生やガンツ先生みたいな厳しい先生が考えた、上級者向けのサプライズなんやわ!ほら、宝箱って言うたら、普通はトラップとかあるもんやし!」
自分に言い聞かせるように、まふゆはまくし立てる。
そう、きっとそうだ。これをクリアすれば、きっともっと豪華な食材が手に入るに違いない。そう思わなければ、この恐怖に心が押し潰されてしまいそうだった。
まふゆはぎゅっとアリスの手を握りしめ、白魔術を発動させるべく、祈るように目を閉じた。
たとえこれがゲームだとしても、ミカゲ一人に戦わせるわけにはいかない。
「みんな、これも授業の一環や!きっと大丈夫!うちも援護するから!」
その楽観的すぎる言葉が、絶望的な状況の中で、仲間たちの凍り付いた心をわずかに溶かす。
「……はっ、そうかもしれねえな!だったら、不足はねえ!」
レオンハルトは剣を抜き、セリウスも魔術を発動させるべく杖を構えた。
まふゆの根拠のない希望が、今、反撃の狼煙となった。




