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「ひゃあっ!冷たい!」
まふゆは思わず甲高い声を上げた。
シャノンに促されるまま、プールサイドの階段にそっと足を下ろした瞬間、経験したことのない冷たさが足先から駆け上がってきたのだ。
心臓がきゅっと縮こまるような、それでいてどこか心地よい刺激に、思わず肩が跳ねる。
「……つめたい」
隣で、同じように足を水につけたアリスも、小さな声で呟いた。彼女もまた、初めての水の感触に薄青い瞳をわずかに見開いている。
「当たり前でしょ、水なんだから。ほら、怖がってないで腰まで浸かりなさい」
シャノンは呆れたように言いながらも、自分はまだ水際で腕を組んだまま、一歩も入ろうとしない。その矛盾した態度に、まふゆはくすりと笑みをこぼした。
「ほら、まふゆ、アリス。ゆっくりでいい」
いつの間にか水の中に入っていたセリウスが、手を差し伸べてくれる。彼の周りの水は、まるで彼の穏やかな魔力に呼応するかのように、静かに揺らめいていた。
「大丈夫だ!すぐに慣れる!なんなら俺が引っ張ってやろうか!」
少し離れた場所で、すでに肩まで水に浸かったレオンハルトが豪快に笑う。
「あ、あかん、自分で入るから!」
まふゆは慌てて首を横に振り、意を決してもう一段、階段を下りた。
ひんやりとした水がふくらはぎを、そして膝を包み込む。全身の肌が粟立つような感覚だが、不思議と嫌な感じはしない。
「……きもちいい……かも」
太陽に火照った肌を、優しい冷たさが鎮めてくれる。水面がきらきらと光を乱反射し、まるで宝石箱の中にいるようだ。
「うん……きもち、いい」
アリスもまふゆの言葉に同調するように、こくりと頷いた。初めての体験が、彼女の中にまた一つ、新しい感覚を刻んでいく。
まふゆはアリスの手をしっかりと握り、ゆっくりと腰まで水に浸かった。フリルだらけの水着が水を吸って少し重いが、それ以上に、水に抱かれるような浮遊感が心地よかった。
「そうだ、その調子だ。怖くないだろう?」
セリウスが安堵したように微笑む。
「二人とも、なかなか筋がいいじゃないか!」
レオンハルトも満足げに頷いている。
初めてのプール。それは、まふゆが思っていたよりもずっと、楽しくて、気持ちのいい場所だった。
仲間たちに見守られながら、まふゆはアリスと共に、新しい世界の扉をまた一つ、開いたのだった。




