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強い日差しが照りつけるプールサイドは、すでに多くの生徒たちの熱気で満ちていた。
空の青さを反射してきらめく水面と、生徒たちの賑やかな声、そして鼻をくすぐる独特の塩素の匂いが、夏の本格的な到来を告げている。
男子たちが一足先にプールサイドへ出ると、その開放的な光景にレオンハルトは「おっしゃー!」と気合の入った声を上げた。
一方、セリウスは眩しそうに少し目を細め、ミカゲは周囲の喧騒など意に介さず、壁際の影になっている場所へと静かに移動した。
やがて、女子更衣室のほうから、きゃっきゃとはしゃぐ声と共に華やかな一団が現れる。その中心に、まふゆたちの姿があった。
「うわ……」
最初に声を漏らしたのは、レオンハルトだった。
彼の視線は、一人の少女に釘付けになっていた。
陽光を浴びて銀糸のように輝く白髪。雪のように白い肌を惜しげもなく晒し、清らかな純白の水着を身にまとったまふゆ。
普段の装束とは違う、布面積の少ないその姿は、瑞々しい果実のようなたわわな胸のラインを強調し、神聖さの中に蠱惑的な色香を漂わせていた。
控えめな雪の結晶の刺繍が、彼女のアルビノエルフとしての神秘性を一層際立たせている。
「……すごいな」
隣でセリウスもまた、息を呑んで呟いた。彼の穏やかな瞳には、普段は見せない熱っぽい色が浮かんでいる。まふゆのあまりの美しさに、二人は言葉を失っていた。
「……」
壁際に立つミカゲもまた、その黒い瞳で静かにまふゆの姿を捉えていた。その視線は普段と変わらぬほど静かだったが、その奥でどんな感情が渦巻いているのかは、誰にも読み取れない。
「おーい!レオンハルト様、セリウス様ー!」
リリアが元気よく手を振りながら駆け寄ってくる。彼女の黒とネオングリーンの水着は、太陽の下でより一層映え、その活発な魅力を振りまいていた。
少し後ろからは、不機嫌そうな顔のシャノンが続く。彼女のスポーティーな水着は、鍛えられたしなやかな体躯によく似合っていたが、本人は一刻も早くこの場から去りたい、というオーラを全身から発している。
そして、まふゆに手を引かれるようにして、アリスがおずおずとプールサイドに足を踏み入れた。フリルとリボンだらけの、およそ泳ぐのには適さないであろうその水着姿は、異様なほどに周囲の目を引いた。
まるで物語の世界から迷い込んできた人形のようで、その浮世離れした存在感に、周囲の生徒たちも囁きを交わしている。
「まふゆ、その……すごいな。似合ってる」
ようやく我に返ったレオンハルトが、少しどもりながらも率直な感想を口にする。
その視線がどこを向いているのか察して、まふゆは思わず頬を赤らめた。
「そ、そうかな?おおきに。レオンハルトたちも、似合ってるで」
まふゆは恥ずかしさを誤魔化すように俯き、自分の胸元を隠すように腕を組む。その仕草が、かえって男子たちの視線を集めていることには、まだ気づいていなかった。
波乱含みのプール授業が、今まさに始まろうとしていた。




