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「……って、せやけど男子は女子寮には入られへんで?」
まふゆは、はたと思いついたように、皆の顔を見回して言った。
いくら協力すると言ってくれても、物理的な問題がある。この学園の寮は、男女で厳格に分けられており、異性の立ち入りは固く禁じられているのだ。
「あ……」
まふゆの言葉に、レオンハルトとセリウスが間の抜けた声を漏らす。勢いで協力すると宣言したものの、そこまで考えが及んでいなかったようだ。
「確かに、そうだな。寮母さんに見つかったら一巻の終わりだ」
レオンハルトが困ったように頭を掻く。彼の豪快さをもってしても、規則は規則だ。
「僕たちも外からなら協力できるけど、寮の中となると……さすがにね」
セリウスも同意し、少し申し訳なさそうな顔でまふゆを見た。
まふゆはアリスの手を握り直し、うーん、と少し考える。
女子寮に連れて行くのはまふゆ一人。何かあった時、すぐに助けを呼ぶことはできない。
ミカゲが言った「爆弾」という言葉が、頭の中で重く響く。
「……問題ない」
静寂を破ったのは、またしてもミカゲだった。
彼はこともなげに、まるで天気の話でもするかのように言い放つ。
「俺は入れる」
「えっ!?」
「はあ!?」
今度はまふゆだけでなく、レオンハルトとセリウスも驚きの声を上げた。
「ミカゲ、お前正気か?どうやって入るんだよ!」
レオンハルトが信じられないといった様子で詰め寄る。
ミカゲはそんなレオンハルトの剣幕を気にも留めず、淡々と答えた。
「影を使えば、誰にも気づかれずに入れる。壁も、人の目も、関係ない」
影人の特性。それは、彼らにとってあまりにも常識で、しかし他の種族にとっては非常識な能力だった。
「そ、そんな無茶な……!」
セリウスが絶句する。理論上は可能だと知っていても、それを実際にやってのけるという発想がなかった。
「あんたの部屋は何階だ」
ミカゲがまふゆに問いかける。
「え、えっと……2階やけど……」
「なら問題ない。何かあれば、すぐに呼べ。すぐに駆けつける」
その言葉には、一片の躊躇も嘘も感じられなかった。
彼は本気で、女子寮に忍び込み、まふゆの近くで待機すると言っているのだ。
「……」
まふゆは言葉を失った。
規則違反だとか、倫理的な問題だとか、そういう次元の話ではない。ただ、自分のためにそこまでしてくれるという事実に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……わかった。ありがとう、ミカゲ」
まふゆがようやくそれだけを言うと、ミカゲはふい、と顔を背けた。
「……別に、あんたのためじゃない。この厄介事が暴発しないための、ただの保険だ」
そのぶっきらぼうな物言いはいつも通りだったが、まふゆには彼の不器用な優しさが痛いほど伝わってきた。




