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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十三話 不思議の国の転校生
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13-15




「……って、せやけど男子は女子寮には入られへんで?」


まふゆは、はたと思いついたように、皆の顔を見回して言った。


いくら協力すると言ってくれても、物理的な問題がある。この学園の寮は、男女で厳格に分けられており、異性の立ち入りは固く禁じられているのだ。


「あ……」


まふゆの言葉に、レオンハルトとセリウスが間の抜けた声を漏らす。勢いで協力すると宣言したものの、そこまで考えが及んでいなかったようだ。


「確かに、そうだな。寮母さんに見つかったら一巻の終わりだ」


レオンハルトが困ったように頭を掻く。彼の豪快さをもってしても、規則は規則だ。


「僕たちも外からなら協力できるけど、寮の中となると……さすがにね」


セリウスも同意し、少し申し訳なさそうな顔でまふゆを見た。


まふゆはアリスの手を握り直し、うーん、と少し考える。

女子寮に連れて行くのはまふゆ一人。何かあった時、すぐに助けを呼ぶことはできない。


ミカゲが言った「爆弾」という言葉が、頭の中で重く響く。




「……問題ない」


静寂を破ったのは、またしてもミカゲだった。

彼はこともなげに、まるで天気の話でもするかのように言い放つ。


「俺は入れる」

「えっ!?」

「はあ!?」


今度はまふゆだけでなく、レオンハルトとセリウスも驚きの声を上げた。


「ミカゲ、お前正気か?どうやって入るんだよ!」

レオンハルトが信じられないといった様子で詰め寄る。


ミカゲはそんなレオンハルトの剣幕を気にも留めず、淡々と答えた。


「影を使えば、誰にも気づかれずに入れる。壁も、人の目も、関係ない」


影人の特性。それは、彼らにとってあまりにも常識で、しかし他の種族にとっては非常識な能力だった。


「そ、そんな無茶な……!」


セリウスが絶句する。理論上は可能だと知っていても、それを実際にやってのけるという発想がなかった。


「あんたの部屋は何階だ」


ミカゲがまふゆに問いかける。


「え、えっと……2階やけど……」

「なら問題ない。何かあれば、すぐに呼べ。すぐに駆けつける」


その言葉には、一片の躊躇も嘘も感じられなかった。

彼は本気で、女子寮に忍び込み、まふゆの近くで待機すると言っているのだ。


「……」


まふゆは言葉を失った。

規則違反だとか、倫理的な問題だとか、そういう次元の話ではない。ただ、自分のためにそこまでしてくれるという事実に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。




「……わかった。ありがとう、ミカゲ」


まふゆがようやくそれだけを言うと、ミカゲはふい、と顔を背けた。


「……別に、あんたのためじゃない。この厄介事が暴発しないための、ただの保険だ」


そのぶっきらぼうな物言いはいつも通りだったが、まふゆには彼の不器用な優しさが痛いほど伝わってきた。




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