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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十三話 不思議の国の転校生
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13-11




ガレオスの一声により、前代未聞のペアが強制的に結成された。


訓練場にいる誰もが、これから始まる模擬戦がただの訓練では終わらないであろうことを予感し、緊張に息を呑む。


「よし!では早速最初の組を発表する!」


ガレオスの野太い声が、張り詰めた空気に響き渡る。


「第一試合!レオンハルト・アルヴァレイン、水鏡まふゆペア!対するはミカゲ、アリス・リデルペアだ!」


その組み合わせが発表された瞬間、訓練場は再びどよめきに包まれた。


よりにもよって、この学園でもトップクラスの実力を持つ王子と、規格外の治癒能力を持つアルビノエルフのペアに、あの危険極まりない二人をぶつけるというのだ。


「なっ……いきなり俺たちとか!」


レオンハルトは驚きつつも、その口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

強敵との戦いを望む彼にとって、この組み合わせはむしろ歓迎すべきものなのだろう。




しかし、まふゆの心境は穏やかではなかった。


(ミカゲとアリスさんが相手……?どないしたら……)


アリスのあの破壊的な力を、どうやって凌げばいいのか。そして、その隣には全てを見通すような暗殺者のミカゲがいる。

勝敗以前に、無事にこの模擬戦を終えられるかどうかすら、まふゆには自信がなかった。


「まふゆ、心配するな」


隣に立ったレオンハルトが、力強い声で言った。


「相手が誰だろうと、俺たちのやることは変わらない。俺が前に出る。お前は俺の援護と、奴らの動きへの警戒を頼む。特に、あのでかい一発には気をつけろ」


その頼もしい言葉に、まふゆはこくりと頷く。不安に揺れていた心が、少しだけ落ち着きを取り戻した。


「まふゆ、気をつけて。ミカゲはアリスの力を利用して、君たちの隙を突いてくるはずだ」


セリウスもまた、心配そうな表情でアドバイスを送る。




一方、対戦相手となる二人は対照的だった。

ミカゲは新しい魔法銃(今度は頑丈な特注品らしい)を渡されたアリスの隣に立ち、低く、静かな声で何かを囁いている。


「いいか。俺が『撃て』と言うまで、絶対に引き金を引くな。それ以外の命令は聞かなくていい。分かったな」

「……わかった」


アリスはこくりと頷く。その薄青い瞳はミカゲを映しているが、その言葉の意味を本当に理解しているのかは定かではない。




「両者、位置につけ!始め!」


ガレオスの号令が轟く。

その瞬間、先に動いたのはレオンハルトだった。


「先手必勝だ!」


大地を蹴り、一直線にミカゲへと肉薄する。王家流の剣術は鋭く、初太刀から相手を圧倒する力に満ちていた。


しかし、ミカゲはレオンハルトの猛攻を紙一重で躱し続ける。その動きには一切の無駄がなく、まるで流れる水のようだ。

彼は剣を合わせることなく、ただひたすらに攻撃を避け、レオンハルトをアリスから引き離していく。


「くそっ、ちょこまかと!」


苛立ちを隠せないレオンハルト。その隙を見逃すミカゲではない。彼はレオンハルトの剣戟の合間を縫うように、一瞬だけアリスの方に視線を送った。




「──撃て」


その一言が、戦場の空気を変えた。


アリスは命令通り、おぼつかない構えで魔法銃の引き金を引く。

再び、凄まじい光の奔流が訓練場を薙いだ。狙いは、ミカゲと斬り結ぶレオンハルト。


「レオンハルト、危ない!」


まふゆは咄嗟に叫び、治癒術ではなく、防御障壁を展開する。幾重にも重ねられた光の壁が、レオンハルトの前に立ち塞がった。


轟音。

障壁はアリスの奔流に触れた瞬間、ガラスのように砕け散る。


しかし、その一瞬の防御がレオンハルトに回避の時間を与えた。彼は爆風に煽られながらも、かろうじて直撃を避けることに成功する。


「……助かった、まふゆ!」


体勢を立て直したレオンハルトが叫ぶ。

しかし、まふゆは自分の手のひらを見つめ、愕然としていた。たった一撃を防いだだけで、体内の魔力がごっそりと奪われている。


(なんて威力やの……!こんなん、何発も受け止められへん……!)


そして、まふゆは気づく。ミカゲの姿が、いつの間にか消えていることに。




「……レオンハルト、後ろ!」


まふゆの警告と同時。レオンハルトの背後に、影から滲み出るようにミカゲが現れた。その手には黒い短刀が握られている。

しかし、その刃がレオンハルトに届くことはなかった。


「……えい」


アリスが、ミカゲの命令を無視して、二射目を放っていたのだ。




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