13-6
魔科学の授業は、あのアリスが放った衝撃的な光の後、どこか上の空のまま終わった。
ガンツでさえ、その後の講義では時折言葉に詰まり、ちらちらとアリスのほうへ視線を送るほどだった。
当のアリスは、そんな周囲の動揺など露知らず、ただ静かに窓の外を眺め続けている。
そして、待ちに待った昼休みを告げるベルが鳴り響いた。
「よし、昼飯にしようぜ!腹が減っては戦はできん!」
レオンハルトが大きく伸びをしながら立ち上がる。その快活な声が、まだ教室に残る緊張をいくらか和らげた。
「兄さんはいつもそれだね。でも、今日は少し頭を使いすぎたかもしれない」
セリウスも苦笑しながら同意する。彼の視線もまた、自然とアリスの方へと向いていた。
「まふゆ、どうする?今日も食堂?それとも購買で何か買うのかしら?」
シャノンがまふゆの席にやってくる。
「うん、それもええね。……でも、その前に」
まふゆは意を決して、自分の後ろの席へと振り返った。
ミカゲは既に立ち上がり、教室を出ていこうとしている。その隣で、アリスはまだ席に座ったまま、ぼんやりと虚空を見つめていた。
「アリスさん」
まふゆが優しく声をかけると、アリスはゆっくりと顔を上げた。感情の読めない青い瞳が、まっすぐにまふゆを捉える。
「……なに?」
「あの、よかったら一緒にお昼ごはん、食べへんかなって……。一人やと、寂しいやろ?」
まふゆは精一杯の笑顔を向ける。
アリスはしばらくの間、まふゆの顔をじっと見つめていた。何かを考えるように、小さく首を傾げる。そして、ぽつりと呟いた。
「……さびしい、ってなに?」
その純粋すぎる問いに、まふゆは言葉を失った。まるで、その感情そのものを知らないかのような口ぶり。
戸惑うまふゆを助けるように、レオンハルトが割り込んできた。
「まあ、細かいことはいいだろ!とにかく、みんなで食ったほうが美味いってことだ!行くぞ!」
そう言って、レオンハルトは半ば強引に話を進める。セリウスも「たまには大人数もいいんじゃないかな」と穏やかに微笑んだ。
アリスは、困惑したようにまふゆと、レオンハルト、セリウスの顔を順番に見比べる。
「……みんなで、食べる……?」
「そうよ。あたしたちは別に、あんたを食べたりしないから安心して」
シャノンが、少し意地悪そうに付け加える。
その時、教室の出口で立ち止まっていたミカゲが、静かに振り返った。その視線はアリスに注がれている。
アリスは、そのミカゲの視線に気づくと、何かを確かめるように彼をじっと見つめ返した。
数秒の沈黙。
やがて、アリスはこくりと小さく頷いた。
「……わかった」
その一言に、まふゆはほっと胸を撫でおろす。
こうして、どこかちぐはぐな雰囲気のまま、まふゆ、レオンハルト、セリウス、シャノン、そしてミカゲとアリスという奇妙な一行は、連れ立って食堂へと向かうことになったのだった。




