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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十三話 不思議の国の転校生
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13-4




二限目の授業を告げるベルが鳴り、A組の生徒たちはぞろぞろと教室を移動し始める。


次に控えるのは、魔科学の授業だ。最新の魔導技術やその理論を学ぶこの授業は、実技も多く、生徒たちからの人気も高い。


まふゆたちも席を立ち、魔科学用の大教室へと向かう。

道中、レオンハルトとセリウスは先程の転校生について小声で議論を交わし、シャノンは少し離れたところを歩いている。ミカゲはいつも通り、静かに彼らの後をついてきていた。


魔科学教室に入ると、独特のオイルの匂いと、金属が冷える匂いが鼻をつく。壁際には用途不明の機械が並び、天井からは複雑な配線が張り巡らされていた。




生徒たちがそれぞれ空いている席に着くと、やがて教室の扉が開き、担当教師であるドワーフのガンツが入ってくる。彼は背が低いながらもがっしりとした体格で、常に冷静な表情を崩さない。


「席に着け。早速始めるぞ」


クールで一切の無駄がないガンツの声が響き、教室が静まり返る。


まふゆがふと教室の後方を見ると、アリスが一番後ろの席に一人でぽつんと座っていた。誰とも話さず、ただじっと教壇を見つめている。その姿は、やはりどこかこの場所から浮いているように見えた。


「今日のテーマは『魔力循環における擬似生命回路の基礎』だ。各自、手元の資料と卓上の小型魔導ユニットを確認しろ」


ガンツが指し示す先には、複雑な魔法陣が刻まれた手のひらサイズの金属プレートが置かれている。

まふゆは隣のセリウスと顔を見合わせた。今日の授業は特に難易度が高いらしい。


「このユニットは、本来エルフ族しか行えない魔力の付与と循環を、擬似的に再現するためのものだ。いいか、魔力とはただのエネルギーではない。それは意思を持ち、生命に近い性質を帯びる。その性質を理解できなければ、魔科学の門を叩く資格はない」


ガンツは厳しい口調で説明を続けながら、ゆっくりと教室を見回る。そして、彼の視線が、後方の席に座るアリスの上でぴたりと止まった。




「……そこの転校生」


ガンツの低い声に、クラス全員の視線がアリスに集まる。

アリスは、呼ばれたことに気づいていないのか、相変わらずぼんやりと前を見ているだけだった。


「おい、聞いているのか。アリス・リデル」


ガンツが少し語気を強めると、アリスはようやくゆるりと顔を上げた。


「……なに?」


悪びれる様子もなく、ただ不思議そうに首を傾げるアリスに、ガンツは眉一つ動かさずに問いかける。


「貴様の種族は何だ?提出された書類には記載がなかった。この授業は種族によって適性が大きく異なる。答えろ」


それは、まふゆたちも疑問に思っていたことだった。皆が固唾を飲んでアリスの答えを待つ。


しかし、アリスは質問の意味がわからない、とでも言うように、しばらく黙り込んだ後、こう答えた。




「……アリスは、アリス」


その答えに、教室がざわつく。種族名ではなく、自分の名前を告げたのだ。ふざけているのか、それとも本当に理解していないのか。


ガンツは腕を組み、その鉄面皮のような表情の奥で、わずかに目を細めた。


「……そうか。ならば実地で確認させてもらう。前に出ろ」


有無を言わせぬその声に、アリスはのろのろと席を立ち、教壇の前へと歩いていく。


「そのユニットに魔力を流し込んでみろ。それで貴様が何者か、おおよその見当はつく」


ガンツはそう言って、一つの魔導ユニットをアリスの前に置いた。

アリスはそれを不思議そうに見つめ、小さな白い手をそっとプレートの上に置く。


(大丈夫かな、あの子……)


まふゆは、ごくりと息を呑んだ。




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