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バスへの集合場所に戻ると、すでに仲間たちは全員集まっていた。
レオンハルトとリリアの二人も、少し離れた場所に立っている。リリアの表情は、どこか吹っ切れたように晴れやかで、レオンハルトは少し困ったような、それでいて優しい顔をしていた。
「遅いぞ、お前ら!」
レオンハルトが、わざと大きな声で言った。
「ご、ごめんなさい……!」
「ったく、心配させるんじゃないわよ」
シャノンもぷいとそっぽを向くが、その声には安堵が滲んでいる。
こうして、六人の波乱に満ちた修学旅行は、終わりを告げようとしていた。
それぞれの胸に、新たな決意と、甘酸っぱい秘密の思い出を抱えて。
学園都市へ戻るバスの車窓から見えるシルヴァニアの街並みは、来た時よりもずっと色鮮やかに、彼らの目に映っていた。
バスの中は、修学旅行の終わりを惜しむ生徒たちの賑やかな声で満ちている。
まふゆは窓の外を流れていく景色を眺めながら、この三日間で起こった出来事を思い出していた。
レオンハルトとのキス、ミカゲとのガラス細工、白檻会の襲撃、そして仲間たちとの誓い。そしてミカゲとのあの甘い時間……。
思い出すだけで、顔が熱くなる。
「……何、にやけてるのよ」
隣の席のシャノンが、じとっとした目つきでまふゆを見ていた。
「えっ、にやけてへんよ!」
「にやけてたわよ。ミカゲとのことでも思い出してたんでしょ、どうせ」
「ち、違うってば……!」
図星を突かれて、まふゆは慌ててぶんぶんと首を振る。その様子に、シャノンは「ふん」と鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまったが、その口元は少し笑っていた。
前の席では、レオンハルトとセリウスが小声で何かを話している。時折こちらを振り返る視線に、何となく気まずさを感じてしまう。
そして、後ろの席の気配。ミカゲはじっと座っているだけなのに、彼の存在がすぐそこにあるだけで、心臓が落ち着かなくなる。
(これから、どうなるんやろう……)
告白の返事は、まだできていない。三人の真剣な想いに、どう応えればいいのか、答えは見つからないままだった。
そして、白檻会とエドウィンという巨大な敵。学園に戻れば、また危険な日常が始まる。
楽しいだけでは終わらなかった修学旅行。
けれど、得たものは大きかった。揺るぎない仲間との絆。そして、胸の中に生まれた、いくつもの温かくて、少しだけ切ない秘密の思い出。
まふゆは、そっと自分のカバンのポケットに触れた。中には、白い星のチャームが入っている。
光を失いかけていた自分を、照らし、導いてくれるような、希望の光。
バスが学園都市の境界を示す大きな門をくぐる。
見慣れた街並みが見えてくると、生徒たちの間から「帰ってきたー!」という歓声が上がった。
波乱に満ちた修学旅行は、こうして幕を閉じた。
そして、彼らの戦いと、恋の物語は、ここからまた新しく始まっていくのだ。
第十二話・了




