表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十二話 少女らは修学旅行へ-後編-
150/237

12-5




リリアに導かれるまま、レオンハルトは賑やかな大通りから外れた、人通りの少ない石畳の小道へと足を踏み入れた。ミカゲがまふゆを連れて行ったのとは逆の方向だった。


道の突き当たりは、小さな広場のようになっており、その片隅には古びた木製のベンチがぽつんと置かれている。


柔らかい日差しが降り注ぎ、どこからか花の甘い香りが漂ってくる、静かで穏やかな場所だった。




「……それで、話とは何だ?」


レオンハルトはベンチを指し示しながら、優しく尋ねた。リリアのただならぬ様子から、ただの世間話でないことは明らかだった。


「う、うん……!」


リリアはこくりと頷くと、ベンチに浅く腰掛けた。レオンハルトもその隣に座る。

心臓の音が、うるさいくらいに耳の奥で響いていた。


ぎゅっと握りしめた手の中には、緑色の星のチャームがある。その冷たい感触だけが、今のリリアの心の支えだった。


「あ……その……」


いざ二人きりになると、練習してきたはずの言葉が喉の奥でつかえて出てこない。


レオンハルトの赤い髪が、日差しを浴びてキラキラと輝いている。その真剣な眼差しで見つめられると、顔に熱が集まっていくのがわかった。


(ダメ、ちゃんと言わなきゃ……!このままじゃ、何も始まらない……!)


リリアは一度、ぎゅっと目を瞑り、それから意を決して顔を上げた。

潤んだ赤い瞳が、真っ直ぐにレオンハルトを捉える。




「あーし……レオンハルト様のことが、好きです!」


絞り出すような、しかし、凛とした声だった。

その言葉は、静かな広場にはっきりと響き渡った。




「……え?」


レオンハルトは、予想外の言葉に、純粋に驚いて目を見開いた。


白檻会のことや、エドウィンのことについて、何か伝えたいことがあるのだとばかり思っていた。まさか、告白されるとは夢にも思わなかったのだ。


リリアは、レオンハルトの反応に心臓が凍りつくのを感じながらも、必死に言葉を続けた。


「魔物に襲われた時……助けてくれた時から、ずっと……!レオンハルト様のことばっかり、考えちゃって……。いつも堂々としてて、みんなを引っ張ってくれて、強くて、優しくて……!」


堰を切ったように、想いが溢れ出す。


「まふゆんのことが好きなんだって、わかってる……!あーしなんか、全然敵わないってことも……!」


声が震え、視界が涙で滲む。それでも、リリアは想いを伝えることをやめなかった。


「でも、それでも……!この気持ちを、どうしても伝えたかった!ただ、知っててほしかった……!」




「……リリア」


レオンハルトが、困惑と、そして申し訳なさが入り混じった声でリリアの名前を呼ぶ。


リリアは、ぶんぶんと首を横に振った。


「返事はいらなくて!困らせたいわけじゃなくて……ただ……ただ、このまま修学旅行が終わっちゃうのが、嫌だっただけで……」


そこまで言うと、ついに堪えきれなくなった涙が、ぽろぽろと頬を伝い落ちた。


「ご、ごめ、急にこんな……忘れて……」

「忘れるわけないだろう」


リリアの言葉を遮ったのは、穏やかで、しかし真剣なレオンハルトの声だった。

彼は、リリアの目から溢れる涙を、そっと親指で拭った。その不意の優しさに、リリアの心臓が大きく跳ねる。


「……ありがとう、リリア。お前の気持ち、すごく嬉しい。……男として、これ以上光栄なことはない」


レオンハルトは、真っ直ぐにリリアの瞳を見つめて言った。


「だけど……お前が言う通り、俺にはまふゆがいる。だから、お前の気持ちに応えることはできない。……すまない」


それは、誠実で、そして残酷な答えだった。

わかっていたことだ。それでも、直接告げられると、胸が張り裂けそうに痛い。


リリアは唇を強く噛みしめ、これ以上涙がこぼれないように、ぐっと堪えた。


「……うん」


やっとのことで、それだけを絞り出す。


「……聞いてくれて、ありがとう」


玉砕覚悟の告白。

結果は、わかっていたはずの、失恋。


それでも、リリアの胸の中には、不思議なほどの清々しさがあった。言えなかった想いを抱えて苦しむよりも、ずっといい。


この痛みも、この涙も、自分が本気で恋をした証なのだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ