12-3
お揃いのチャームを買い、仲間との絆を再確認したことで、まふゆの心は温かい幸福感で満たされていた。
レオンハルトたちが次の店はどこにしようかと賑やかに話しているのを、まふゆは微笑みながら聞いていた。
(みんなと一緒やと、時間があっという間に過ぎていくな……)
そんなことを考えていると、不意に袖をく、と軽く引かれた。
驚いて隣を見ると、ミカゲが黒い瞳でじっとまふゆを見つめていた。
彼は周囲に気づかれないよう、ごく僅かに顎をしゃくって、人通りの少ない脇道を示す。
「……?」
まふゆが不思議そうに首を傾げると、ミカゲは「少しだけ」と唇の動きだけで伝えてきた。
有無を言わせぬ、しかし強引ではないその雰囲気に、まふゆはこくりと頷く。
「……なあ、レオンハルト」
ミカゲは皆の会話の切れ目を見計らって、レオンハルトに声をかけた。
「ん?なんだ、ミカゲ」
「少し、こいつを借りる」
「は……?」
ミカゲはそれだけ言うと、まふゆの手首を優しく、しかし確実につかんだ。
「え、ちょっ、ミカゲ!?」
「おい、どこへ行く気だ!」
セリウスとレオンハルトの制止の声が背後から聞こえるが、ミカゲは振り返らない。
シャノンやリリアの「えー!」「ずるいー!」という声も、賑やかな通りの喧騒に紛れて遠ざかっていく。
「ミカゲ、待って……!みんなが……」
「すぐに戻る」
短い返事だけを残し、ミカゲはまふゆを連れて土産物屋の喧騒から離れていく。彼の掴む手は少しだけ早足で、まふゆは戸惑いながらもその大きな背中を追いかけた。
連れてこられたのは、観光客の姿もまばらな、静かな小道だった。
古い石畳の両脇には蔦の絡まるレンガ造りの建物が並び、まるで時間が止まったかのような、穏やかな空気が流れている。
「……ここ、は……?」
「……」
ミカゲは何も答えず、まふゆの手を離すと、道の先を指差した。
その先には、小さな広場があり、中央には古びた石造りの井戸が一つ、静かに佇んでいた。井戸の周りには色とりどりの花が植えられたプランターが置かれ、優しい陽光を浴びて輝いている。
「きれい……」
まふゆは思わず息を呑んだ。まるで絵本の中に出てくるような、可愛らしくて、どこか懐かしい風景だった。
「昨日、あんたが見たがってた泉とは違うが」
ミカゲがぽつりと呟く。昨日、市内観光でミカゲが提案した「嘆きの泉」。
結局ゆっくり観光できなかったが、彼はそれを覚えていてくれたらしい。
「ううん、ここも、すごく素敵やわ。おおきに、ミカゲ。連れてきてくれて」
まふゆが心からの笑顔を向けると、ミカゲはふい、と顔を背けた。
「……あんたのためなら」
(ミカゲは、いつもこうやな……)
その行動の一つ一つに、不器用な優しさが滲んでいる。まふゆは、そのことがたまらなく愛おしく感じられた。
二人はどちらからともなく井戸の縁に腰を下ろした。心地よい風が吹き抜け、まふゆの白い髪を優しく揺らす。
集合時間まで、あと一時間もない。限られた、二人だけの静かな時間だった。




