12-2
バスの出発時間まで、まだ少しだけ余裕がある。
エドウィンから解散を告げられた生徒たちは、最後の思い出作りとばかりにお土産物屋へと散っていく。
「さて、俺たちも行くか!」
レオンハルトがパン、と手を叩いて皆を促した。
「そうね。あたし、家族にここの名物のお菓子、頼まれてるのよ」
「あーしもー!お姉ちゃんに何か買って帰らないと!」
シャノンとリリアも乗り気で、早速どのお店に行こうかと話し始めている。
「まふゆは何を買うんだ?」
隣を歩くセリウスが、優しく尋ねてきた。
「えっと……うち、家族も友達もおらんから……誰かに、っていうのはないんやけど……」
まふゆは少し寂しそうに微笑んだ。自分には、お土産を渡す相手がいない。
(……あれ?そういえば、うちの家族って……?)
まふゆが疑問に思ったその時だった。
「だったら、全員でお揃いのものを買うっていうのはどうだ?」
レオンハルトが、名案とばかりに提案した。
「お揃い……!」
その言葉に、まふゆの菫色の瞳がぱっと輝く。先程の疑問は、消え去ってしまった。
シャノンとリリアも「いいんじゃないの?」「賛成でーす!」と声を上げた。
「……子供じみてる」
ミカゲがぽつりと呟いたが、その口元はどこか楽しそうだ。
「いいじゃないか、たまには。僕も賛成だ」
セリウスが穏やかに微笑む。
六人は賑やかな土産物屋通りを歩き始めた。
通りの両脇には、シルヴァニア特産のレース製品や、色とりどりのガラス細工、美味しそうなお菓子を売る店がずらりと並んでいる。
「わー!見て、このキーホルダー可愛いー!」
リリアが動物をかたどった木彫りのキーホルダーを手に取って声を上げる。
「こっちのハンカチも綺麗ね。刺繍が細かいわ」
シャノンもレース製品の店に興味を示している。
まふゆは、楽しそうに店を覗き込む仲間たちの背中を見ながら、胸の中に温かいものが広がるのを感じていた。
昨日までの重苦しい雰囲気が嘘のようだ。
もちろん、白檻会という巨大な問題が消えたわけではない。それでも、今この瞬間は、普通の学生として、仲間との時間を楽しむことができた。
「あんたも、早くしないと置いてくぞ」
不意に、後ろからミカゲに声をかけられ、まふゆははっと振り返った。いつの間にか、少しだけ皆と距離が空いてしまっていた。
「あ、ご、ごめん、ミカゲ」
「……何を見てた」
「ううん、何でもない。みんな、楽しそうやなって思って」
「……そうか」
まふゆが微笑むと、ミカゲはふい、と視線を逸らした。その耳が、ほんの少しだけ赤くなっているように見えた。
様々な店を巡った結果、六人は星の形をした小さなガラスのチャームをお揃いで買うことに決めた。
それぞれのイメージカラーに合わせたチャームは、光を受けるとキラキラと輝き、とても綺麗だった。
まふゆは、もちろん白。それは、雪のようであり、彼女の純粋さを象徴しているかのようだった。
「これ、みんなでお揃いやね」
まふゆは自分の手のひらの上で輝く白い星を見つめ、嬉しそうに呟いた。
「ああ。この修学旅行の、俺たちの誓いの証だ」
レオンハルトが、自分の赤い星を誇らしげに見せる。
「ノセのは……なんか地味ね」
シャノンがセリウスの持つ銀色の星を見て茶化し、セリウスは「君のピンクよりは落ち着いていていいと思うけどね」と軽く言い返す。
ミカゲは黒い星を無言で受け取ると、すぐに懐にしまった。
リリアは緑色の星を、シャノンはピンク色の星を、それぞれ嬉しそうに眺めている。
短い自由時間だったが、六人の心には、温かくてキラキラした思い出がまた一つ、深く刻まれた。




