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泉のほとりに、重い沈黙が落ちる。
昏倒した男たちの姿と、先程までの激しい戦闘の痕跡が生々しく、美しい景色との間に不穏な亀裂を生み出していた。
まふゆの決意に満ちた言葉を、レオンハルトたちは驚きと共に受け止めていた。
「まふゆ……?」
レオンハルトが、信じられないといった様子で問い返す。彼の視線は、まふゆと、その隣に立つミカゲの間を行き来していた。
「……うん」
まふゆは、こくりと強く頷く。
ミカゲがその細い肩にそっと手を置き、案じるように覗き込んできた。その瞳に「無理はするな」というメッセージが浮かんでいる。
まふゆは彼に「大丈夫」と微笑みかけると、仲間たちに向き直った。
「ここは……人目につくかもしれへん。ホテルに戻る前に、どこか静かな場所で話したい」
「……わかった」
レオンハルトは、まだ納得しきれない顔をしながらも、まふゆの真剣な眼差しに押されるように頷いた。
一行は倒れた男たちを一瞥すると、来た道を引き返し、泉を後にした。
道すがら、レオンハルトが学園に連絡を入れ、騎士団による事後処理を依頼する。その手際の良さに、彼がただの学生ではなく、一国の王子なのだという事実を改めて思い知らされた。
一行がたどり着いたのは、街の中心から少し外れた、静かな公園の東屋だった。
夕暮れのオレンジ色の光が、六人の顔を複雑な色合いで照らし出す。
まふゆは意を決して、ゆっくりと口を開いた。
「まず……白檻会は、表向きはエルフの保護組織やけど……ほんまは違う」
ぽつり、ぽつりと紡がれる言葉に、全員が息を飲む。
「みんなが使ってる魔導機……あれは、エルフの命を媒体にして作られてるんよ」
「──なっ!?」
レオンハルト、セリウス、シャノン、リリア、全員が絶句した。
信じられない、という表情でまふゆを見つめる。普段、何気なく授業で使い、その恩恵を受けている道具が、そんな非人道的な方法で作られているなど、想像もしたことがなかったからだ。
「嘘だろ……!?そんなことが……そんなことが許されていいはずがない!」
レオンハルトが、怒りに声を震わせる。理想主義者である彼にとって、それは到底受け入れられる真実ではなかった。
「じゃあ、あたしたちが使ってたアレも……」
シャノンが青ざめた顔で呟く。
「白檻会は、魔導機を量産するために、エルフを……特に、アルビノエルフであるうちを狙ってる。さっきの襲撃も、そのためや」
まふゆは、イースターの時に白檻会に襲われたこと、そしてミカゲに助けられたことを、途切れ途切れに、話した。
話を聞き終えた時、東屋は再び重い沈黙に包まれた。
リリアはショックのあまり口元を押さえ、セリウスは苦渋に満ちた表情で俯いている。
「……すまなかった、まふゆ」
レオンハルトが、悔しさを滲ませた声で言った。
「お前がそんな目に遭っていたなんて……知らなかったとはいえ、俺は……!」
「ううん、レオンハルトのせいやない!言わんかった、うちの責任やから……!」
「……だとしても、だ」
レオンハルトは唇を噛みしめる。そして、視線をミカゲに向けた。
「ミカゲ。お前は、これを知っていたんだな。知っていて、一人でまふゆを守っていた」
その声には、もう敵意はなかった。代わりに、自分への不甲斐なさと、ミカゲに対する純粋な問いかけだけがあった。
ミカゲは何も答えず、ただ静かに佇んでいる。
それが、肯定の証だった。




