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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十一話 少女らは修学旅行へ-中編-
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11-5




工房での体験を終え、昼食のためにホテルへと戻る。


午後の市内観光は、まふゆ、レオンハルト、セリウス、ミカゲ、シャノン、そしてリリアの六人班だ。

いつものメンバーでありながら、今は複雑な感情が渦巻く、最も気の重い集まりでもあった。


昼食の席でも、会話は弾まなかった。

レオンハルトとミカゲは互いに視線も合わせず、セリウスはその間で困ったように微笑んでいるだけ。


リリアは相変わらず食が進まない様子で、時折レオンハルトを盗み見ては、すぐに俯いてしまう。


「……なんか、お通夜みたいね」


シャノンが呆れたようにポツリと呟いた言葉が、気まずいテーブルの空気を的確に表していた。


まふゆは、手の中にある小さな包みをぎゅっと握りしめる。工房で作った、ミカゲとの思い出のグラスだ。これだけが、今の心の支えだった。


食後、エドウィンの指示で班ごとに集合し、地図と自由行動の際の注意事項が書かれたパンフレットが配られた。


「シルヴァニアは歴史ある美しい街ですが、路地裏などには治安の悪い場所もあります。決して一人で行動しないように。では、解散。門限までには必ずホテルに戻るように」


エドウィンが穏やかに告げる。その緑色の瞳が、一瞬だけまふゆを捉え、ねっとりと舐めるように細められたことに、誰も気づかない。




「さて、どうする? 行きたい場所とかあるか?」


リーダーシップを発揮しようと、レオンハルトが努めて明るい声で切り出した。

しかし、誰もすぐに口を開かない。


「……あたしは、別にどこでも。まふゆが行きたいところに行くわ」


シャノンがそっぽを向きながら言う。


「あーしも……みんなと一緒でいい、かな……」


リリアが力なく同意する。

セリウスとミカゲは黙ったままだ。


「せ、せやな……ええと……」


まふゆが困ってパンフレットに目を落とす。

美しい街並みの写真、歴史的な建造物、人気のスイーツ店……。どれも魅力的だが、今のこの空気で楽しめる自信がない。




「……決まらないなら、俺が決める」


沈黙を破ったのは、ミカゲだった。

彼はまふゆのパンフレットを覗き込むと、ある一点を指差した。


「ここへ行く」

「え?『嘆きの泉』……?」


そこは、街の外れにある古い泉だった。パンフレットの解説には、『かつて恋人を亡くした妖精が、その悲しみから涙を流し続けてできた泉。泉にコインを投げ入れると、純粋な願いが叶うという言い伝えがある』と書かれている。


「へぇ、ロマンチックな場所じゃない。ミカゲっち、意外〜」


リリアが少しだけ興味を示したが、レオンハルトは眉をひそめた。


「街の外れか……。あまり治安のいい場所じゃなさそうだが」

「だからどうした。俺たちがいて、危険なことなどないだろう」


ミカゲの言葉には、絶対的な自信が満ちていた。事実、このメンバーならば、多少の危険は問題にならないだろう。


「僕はいいと思うよ。言い伝え、少し興味があるしね」


セリウスが賛成すると、場の空気は「嘆きの泉」へ向かうことで固まった。

かくして、六人の波乱含みの市内観光は、静かな泉を目指して始まることになった。




しかし、六人の間には気まずい距離が空いている。自然と、レオンハルトとセリウス、シャノンとリリア、そしてまふゆとミカゲ、というように分かれて歩く形になっていた。


「……大丈夫か?」


隣を歩くミカゲが、低い声で尋ねる。


「え?う、うん。大丈夫やけど……」

「……顔色が悪い」


ミカゲはそう言うと、ふいとまふゆの前からいなくなったかと思うと、すぐに戻ってきた。

その手には、色鮮やかなフルーツが刺さった串が握られている。


「……食え」

「え、でも……」

「朝も昼も、ろくに食べていないだろう。倒れられたら迷惑だ」


ぶっきらぼうな言い方だが、その裏にある優しさが痛いほど伝わってくる。

まふゆが「ありがとう」と受け取って一口食べると、甘酸っぱい果汁が口の中に広がった。


「……おいしい」

「そうか」


ミカゲの口元が、ほんの少しだけ緩む。

そのやり取りを、少し離れた場所からレオンハルトが苦い顔で、そしてリリアが悲しそうな瞳で見つめていた。


楽しいはずの時間は、複雑な想いを乗せたまま、ゆっくりと過ぎていく。泉は、まだ遠かった。




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