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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十一話 少女らは修学旅行へ-中編-
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11-4




「ふ、ふふ……ちょっと形変になってしもたけど、これはこれでかわええな?」


完成したばかりでまだほんのり温かいグラスを、まふゆは両手でそっと持ち上げる。


吹き竿から切り離されたそれは、完璧な円柱とは言えず、少しだけ首を傾げたように歪んでいた。けれど、光を透かすと不規則にきらきらと輝いて、世界に一つだけの特別なものに見える。


まふゆの楽しそうな声に、それまで黙って作業を見ていたミカゲが、ふ、と息だけで笑った。


「……あんたが作ったんだ。可愛くないはずがない」


その声は、いつもよりずっと穏やかで、優しさに満ちていた。


まふゆは驚いてミカゲを見上げる。彼の黒い瞳が、慈しむように自分と、そして自分の手の中にあるグラスに向けられていることに気づき、胸の奥がきゅう、と甘く痛んだ。


「ミカゲと一緒やったから、作れたんよ。ありがとう」


素直な感謝の言葉を口にすると、ミカゲは少しだけ気まずそうに視線を逸らした。


「……別に」


短く呟く彼の耳が、ほんの少しだけ赤く染まっているのを、まふゆは見逃さなかった。


(ミカゲ……)


彼が示してくれる、独占欲の裏にある不器用で真っ直ぐな優しさ。

それに触れるたび、心が揺さぶられる。


他の生徒たちの喧騒も、遠くでこちらを窺っているレオンハルトやセリウスの視線も、今はもう気にならなかった。

ただ、隣にいるミカゲの存在だけが、まふゆの世界のすべてだった。




「このグラス、どないしよかな……。お花とか飾ったら、綺麗やろか」

「……あんたが使えばいい」

「え?」

「あんたが、毎日使え」


ミカゲはまふゆの手からそっとグラスを受け取ると、それをじっと見つめた。


「……俺が、あんたのために作ったものだ」


それは命令のようでもあり、懇願のようでもあった。

このグラスを見るたびに、自分を思い出してほしい。そんな声なきメッセージが、彼の瞳から伝わってくる。


「……うん。わかった。大切にする」


まふゆがこくりと頷くと、ミカゲは満足そうに口元を微かに綻ばせた。

それは本当に些細な変化だったけれど、まふゆにとっては、どんな綺麗な景色よりも心に残る、特別な笑顔に見えた。




ガラス細工の体験が終わり、工房から出る頃には、朝の気まずさは嘘のように薄れていた。

もちろん、レオンハルトとの間にはまだぎこちない空気が残っているし、リリアのことも気がかりだ。


でも、ミカゲと心を通わせることができたという事実が、まふゆの心を少しだけ軽くしてくれていた。


午後は、班に分かれての市内観光。

まふゆの班は、レオンハルト、セリウス、ミカゲ、シャノン、そしてリリア。いつもの六人だ。


複雑な想いが絡み合う、波乱含みの市内観光が、今、始まろうとしていた。




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