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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十話 少女らは修学旅行へ-前編-
132/173

10-7




温泉から上がった後も、リリアのぎこちない態度は変わらなかった。


部屋に戻っても、彼女は「ちょっと先に寝るね」と早々にベッドに潜り込んでしまい、まふゆとシャノンは顔を見合わせるしかなかった。


「……やっぱり、変よね」

「うん……」


重い空気が漂う中、部屋のドアがコンコン、とノックされた。

シャノンが扉を開けると、そこに立っていたのはレオンハルトだった。


「よう。ちょっといいか?実は、これから有志で肝試しをやるって話になってるんだが……」


レオンハルトの言葉に、まふゆは「き、肝試し!?」と声を上げる。


「ああ。ホテルの裏にちょっとした森があってな。そこの中にある古びた祠まで行って、置いてあるお札を取ってくるだけなんだが……。お前たちもどうだ?」

「へぇ、面白そうじゃない。あたしは行くわ」


シャノンは意外にも乗り気で、くっと口角を上げた。


まふゆは少し迷った。怖いのは苦手だ。でも、このまま部屋でリリアのことでもんもんと悩んでいるよりは、気分転換になるかもしれない。


「……うちも、行ってみる」

「よし、決まりだな。じゃあ、十分後にロビーで」


レオンハルトが去った後、まふゆは眠っているリリアのほうをちらりと見た。


(リリアさん、寝てしもたし……うちらだけで行って、ええんかな……)


そんなまふゆの心を見透かしたように、シャノンが言った。


「あいつはそっとしておきなさい。今は、一人になりたい時なんでしょ」

「……うん」


シャノンの言葉に頷き、まふゆは上着を羽織った。




十分後、ロビーに降りると、レオンハルトとセリウス、ミカゲの三人に加え、他のクラスの生徒も数人集まっていた。


「よし、全員集まったな。それじゃあ早速だが、ペア決めといくか!」


レオンハルトが差し出したのは、数本の木の棒だった。


「この棒の先に同じ色が塗ってあるやつがペアだ。一本ずつ引いてくれ!」


生徒たちが次々と棒を引いていく。

シャノンはB組の男子生徒とペアになったらしく、「ちっ、まふゆとがが良かったのに」と小さく舌打ちした。セリウスも別の女子生徒とペアになり、少し残念そうな顔をしている。


「じゃあ、次はまふゆの番だな」


レオンハルトに促され、まふゆは緊張しながら一本の棒を引いた。棒の先には、鮮やかな青色が塗られている。


「青か。……俺と一緒だな」


そう言って自分の棒を見せたのは、レオンハルトだった。

彼の棒にも、同じ青色が塗られている。


「よ、よろしく、お願いします……」

「ああ、よろしくな。俺がついてるから、何も心配いらないぞ」


にっと笑いかけるレオンハルト。昼間の事故を思い出して、まふゆの心臓がまたどきりと鳴る。


その時、最後の一本を引いたミカゲが、無言で自分の棒をじっと見つめているのに気づいた。


彼のペアは、別のクラスの大人しそうな女子生徒だったが、その視線は明らかにまふゆとレオンハルトに向けられており、氷のように冷たかった。




「それじゃあ、出発だ!一番奥の祠にあるお札を取って、無事に戻ってきたペアが勝ちだぞ!」


レオンハルトの号令で、各ペアは懐中電灯を片手に、次々と夜の森へと入っていく。


森の中は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。

月明かりも木々に遮られ、足元は暗い。風が吹くたびに、ざわざわと葉が擦れる音が不気味に響く。


「ひゃっ!?」


木の根に足を取られ、まふゆは短い悲鳴を上げた。


「大丈夫か?」


すかさずレオンハルトが腕を掴んで支えてくれる。その逞しい腕に、まふゆは安堵と気まずさで胸がいっぱいになった。


「あ、ありがとう……」

「怖がらなくていい。ただの森だ」


レオンハルトの声は、不思議と落ち着きを与えてくれる。


「でも……なんか、誰かに見られてるような気がして……」

「気のせいだ。……それとも、俺以外の男に見られるのが嫌か?」

「えっ!?」


耳元で囁かれた言葉に、まふゆはびくっと体を震わせる。レオンハルトは悪戯っぽく笑っていた。


(あかん、意識したら余計に怖なってきた……!)


心臓をばくばくさせながら歩いていると、道の先に古びた鳥居が見えてきた。どうやら、目的地の祠はもうすぐらしい。


その時だった。




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