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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十話 少女らは修学旅行へ-前編-
131/237

10-6




夕食の時間は、豪華なビュッフェスタイルだった。

美味しい料理が並び、周りからは楽しそうな声が聞こえてくる。しかし、まふゆの心は晴れなかった。


昼間のレオンハルトとの事故が、ずっと頭から離れない。ちらりとレオンハルトを見ると、彼もどこか落ち着かない様子で、目が合うと気まずそうに逸らされてしまう。


そして、もう一つ気になることがあった。

自由時間から戻ってきてから、リリアの元気が少しないのだ。


「リリアさん、どないしたん?あんまり食欲、ないみたいやけど……」

「え?あ、ううん、なんでもないよー!ちょっと昼間にはしゃぎすぎちゃったかなーって」


リリアはいつものように笑顔を作るが、その笑顔はどこかぎこちなく、まふゆの目を見てくれない。

シャノンもその様子に気づいているのか、心配そうにリリアを窺っている。


結局、そのぎこちない空気は夕食が終わるまで続いた。




そして、夜。

楽しみにしていた温泉の時間になっても、まふゆの心はもやもやとしたままだった。


「うわぁ……!すごい!露天風呂や……!」


湯気の向こうに広がっていたのは、満点の星空の下、岩で組まれた風情のある露天風呂だった。


昼間の喧騒が嘘のように静かで、心地よいお湯の音だけが響いている。

まふゆはシャノンと二人、そっと肩までお湯に浸かった。


「はぁ……気持ちええ……」

「ん……最高ね」


旅の疲れがじんわりと解けていくのを感じる。

しかし、リリアは洗い場で体を洗った後も、なかなか湯船に入ってこようとしなかった。


「リリアさん?こっち入らへんの?」

「あ、うん……。あーし、ちょっとのぼせやすいから、先に体冷やしてから入るねー」


そう言って、リリアは少し離れた場所にある岩に腰掛け、空を見上げている。

その横顔は、どこか寂しげに見えた。


「……ねえ、まふゆ」


シャノンが小声で話しかけてくる。


「リリアのやつ、やっぱりおかしいわよね。自由時間から戻ってきてから、ずっとあんな感じ」

「うん……うち、何か悪いことでもしてしもたんかな……」

「さあ……。でも、あんたのせいじゃないと思うけど」


シャノンの言葉に少しだけ救われるが、やはり気になってしまう。

まふゆは意を決して、湯船から上がった。




「リリアさん」


濡れた体でリリアの隣に座ると、リリアはびくりと肩を震わせた。


「ま、まふゆん……。どうしたの?湯冷めしちゃうよ?」

「リリアさんこそ。……うち、何かしたかな?リリアさんを怒らせるようなこと……。もしそうやったら、謝るから、教えてほしい」


まっすぐにリリアの瞳を見つめて言うと、リリアは俯いてしまった。


「……ううん、まふゆんは、何も悪くないよ。全然」

「でも……」

「ほんと、ほんとだから!……ただ、ちょっと……色々考えちゃって……。ごめんね、心配かけちゃって」


そう言って笑うリリアの瞳は、潤んでいるように見えた。

これ以上、何を言えばいいのか分からない。


まふゆが戸惑っていると、リリアは「あーし、ちょっと先に上がるね!」と立ち上がって、足早に脱衣所へと向かってしまった。


残されたまふゆは、呆然とその後ろ姿を見送ることしかできない。

星空の下、温泉の湯気だけが、静かに立ち上っていた。




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