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「えっ、いいのか!?」
レオンハルトがぱあっと顔を輝かせた。王族として普段から美食に囲まれているだろうに、彼の反応はまるで初めてご馳走を前にした子供のようだ。
「そ、それじゃあ、遠慮なく……」
「……いいのかい?君の分がなくなってしまうんじゃ……」
セリウスは遠慮がちにそう言うが、その視線は桜の木が描かれたそぼろご飯に釘付けになっている。知的好奇心旺盛な彼にとって、未知の国の料理は非常に魅力的に映るのだろう。
まふゆは「大丈夫です」と微笑むと、お弁当箱の下の段を取り出した。そこにも同じように、けれど少し違うおかずが詰められている。
「二段になっとるんです。やから、たくさんあるんですよ」
彼女は鞄から予備の食器、おそらくこれも桜の国から持ってきたものだろう繊細な作りの木のフォークを取り出すと、まずレオンハルトの弁当箱の空いているスペースに、そっとそぼろご飯をよそった。
「うおっ……!すまないな、まふゆ!」
レオンハルトは早速それを一口頬張り、目を大きく見開いた。
「……うまい!なんだこれ!甘辛い味付けの肉と、優しい味の卵が口の中で……!うまいぞ、まふゆ!」
次に、セリウスの弁当箱にも同じように取り分ける。
「……ありがとう」
セリウスは静かに礼を言うと、上品な仕草で一口運び、そして、ふっとその端正な顔を綻ばせた。
「……美味しい。初めて食べる味だ。……温かい味がする」
その穏やかな微笑みに、まふゆは少し胸が高鳴るのを感じた。
そして、まふゆは少し緊張しながら、後ろの席のミカゲに向き直った。彼は相変わらず表情を変えず、ただじっとこちらの様子を見ている。
「あの……ミカゲさんも、よかったら……」
まふゆが恐る恐るお弁当箱を差し出すと、ミカゲは少しの間、まふゆの顔と弁当箱を交互に見つめた。彼の黒い瞳の奥で、何かが揺らいでいるように見える。
やがて彼は、こくり、と小さく頷くと、自分の質素な携帯食の包みの上に、まふゆがよそったご飯を静かに受け取った。
ミカゲはそれを一口、音もなく口に運ぶ。
そして、ほんのわずか、彼の纏う空気が和らいだ。
「……悪くない」
ぽつりと呟かれたその一言は、彼なりの最大の賛辞なのかもしれない。
まふゆはほっとして、嬉しそうに微笑んだ。
こうして四人は、それぞれの机を寄せ合い、少し不思議で、だけれど温かい昼食の時間を過ごすのだった。




