表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第十話 少女らは修学旅行へ-前編-
129/237

10-4




そして一時間後。


ホテルの自室で少しだけ旅の荷を解いたまふゆたちは、再びロビーへと降りていった。

広々としたロビーには、同じように部屋から出てきた生徒たちが集まり始めており、活気にあふれている。


「あ、いたいた!レオンハルト様ー!」


リリアが輪の中心にいる長身の王子を指さす。その隣にはセリウス、そして少し離れた柱に寄りかかるようにしてミカゲの姿もあった。


三人の姿を認めると、またしてもまふゆの心臓がきゅっと縮こまるのを感じる。


「お、来たか。部屋はどうだった?」


レオンハルトが気さくに話しかけてくる。その笑顔はいつも通り爽やかで、まふゆは少しだけ安堵した。


「うん、すごく広くて綺麗やったよ!窓から湖が見えて、素敵やった!」

「それは良かった。僕たちの部屋も、なかなか眺めが良かったよ」


セリウスも穏やかに微笑む。その柔らかな表情に、まふゆも自然と笑みを返した。


(……よかった。二人とも、いつも通りや……)




しかし、そう思ったのも束の間だった。


「まふゆ」

「ひゃいっ!?」


不意に背後からミカゲに名前を呼ばれ、まふゆは変な声を上げて飛び上がった。振り返ると、ミカゲがじっとまふゆの顔を見ている。


「……あんた、自由時間はどうするつもりだ」

「えっ!?え、えっと……リリアさんとシャノンさんと……」

「へぇ、そうなんだ。俺はてっきり、まふゆは俺と回ってくれるものだとばかり思っていたが」

「僕もだよ。まふゆさえ良ければ、一緒に街を案内したいと思っていたんだけど」


ミカゲの言葉に被せるように、レオンハルトとセリウスが会話に入ってくる。三人の視線が、一身にまふゆへと注がれた。


それは、明らかに昨日までの友情とは違う、熱を帯びた視線。


「え、えっと、あの、それは……」


どう答えるべきか分からず、まふゆが狼狽えていると、リリアとシャノンが助け舟を出してくれた。


「ちょっとちょっとー!抜け駆けは禁止ですよー、王子様がたー!」

「そうよ。まふゆは先にあたしたちと約束してたんだから」


リリアがぷくっと頬を膨らませ、シャノンも腕を組んで二人を牽制する。


その様子に、レオンハルトは「はは、すまんすまん」と苦笑し、セリウスも「ごめん、少し気が急いてしまったみたいだ」と謝った。

ミカゲだけは何も言わなかったが、その視線はどこか不満げに見えた。




「はーい、皆さんお静かに!今から夕食の時間まで、自由行動としまーす!ただし!門限はきっちり守ること!いいわね?」


ロビーにローゼリアの声が響き渡る。それを合図に、生徒たちは一斉にホテルの外へと駆け出していった。


「よし、じゃああたしたちも行こっか、まふゆん!」

「うん!」


リリアに手を引かれ、まふゆはほっと胸をなでおろしながら、三人に「ま、また後でね!」と声をかけて街へと駆け出した。


「ふぅ……助かったぁ……」

「まふゆん、大変だねぇ。モテモテじゃん」

からかうように言うリリアに、まふゆは「そんなことないって!」と顔を赤らめる。




シルヴァニアの街は、夕暮れの光を浴びて、昼間とはまた違うロマンチックな雰囲気を醸し出していた。


三人はまず、まふゆが気になっていた可愛い雑貨屋に立ち寄った。店内には、綺麗なガラス細工や手作りのアクセサリー、良い香りのするポプリなどが所狭しと並べられている。


「うわぁ……!見て、この髪飾り、すごく綺麗……」


まふゆが手に取ったのは、小さな黒い蝶々を模したガラスの髪飾り。光に透かすと、きらきらと繊細な輝きを放つ。


(……ミカゲの瞳の色みたい……)


ふとそんなことを考えてしまい、まふゆは慌てて髪飾りを元の場所に戻した。


「まふゆんには、こっちの白いお花のほうが似合うと思うなー」

「……あんたは、こういうシンプルな方がいい」


リリアとシャノンが、それぞれ違う髪飾りを持ってきてくれる。

三人で「どっちがいいかな」「こっちも可愛い」と笑い合う時間は、とても楽しくて、さっきまでの気まずさを忘れさせてくれた。




結局、三人でお揃いの小さなブレスレットを買い、店を出る頃には、空は美しい茜色に染まっていた。


「あー、楽しかった!ねぇ、あそこのカフェでお茶しない?」


リリアが指さす先には、湖に面したお洒落なテラス席のあるカフェがあった。


楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

このまま、何事もなく穏やかに一日が終わってくれればいい。

まふゆは胸の内で、そう小さく願っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ