9-14
その日の夜。
女子寮の自室のベッドに潜り込んでも、まふゆの目は冴え渡っていた。
天井をぼんやりと見つめながら、今日一日の出来事を思い返す。
(……うち、告白、されたんやんな……?)
レオンハルト、セリウス、そしてミカゲ。
三人の顔が代わる代わる脳裏に浮かび、そのたびに心臓がどきりと音を立てる。
顔にぶわりと熱が集まり、まふゆは慌てて布団を頭まで深く被った。
『お前のことが好きだ』
力強く、それでいて真剣な声でそう言ったレオンハルト。
いつも兄貴分として頼りにしてきた彼の、初めて見る男の人の顔。思い出しては、胸がきゅっと締め付けられる。
『君が好きだ』
泣きそうになりながらもそれでもまっすぐに気持ちを伝えてくれたセリウス。
彼の苦悩と、秘めていた想いの強さを知ってしまい、どうしようもなく心が揺さぶられる。
『まふゆが好きだ』
淡々とした、けれど何よりも強い意志を感じさせる声で告げたミカゲ。
いつも隣にいてくれる安心感。その静かな瞳の奥に、あんなにも熱い想いが隠されていたなんて。
「……うぅ……どないしたらええの……」
まふゆは布団の中で小さく呻いた。
三人の告白は、どれも真剣で、本物だった。誰の気持ちも、軽んじることなんてできない。
でも、答えなんて出せるはずもなかった。
「れ、レオンハルト……。セリウス……。ミカゲ……」
恐る恐る、三人の名前を呼び捨てにしてみる。
そのたびに、先程のやりとりが鮮明に蘇り、顔から火が出そうになる。心臓が早鐘を打って、うるさくて眠れない。
嬉しくない、と言えば嘘になる。
でも、それ以上に戸惑いの方が大きかった。
三人は、大切な仲間だ。これからもずっと、一緒に笑い合っていたい。
でも、今日の出来事で、もう今までと同じではいられないような気がした。
「……あかん、寝られへん……」
まふゆはがばりとベッドから起き上がると、窓辺に歩み寄った。
窓の外には、静かな夜の学園が広がっている。空には月が煌々と輝いていた。
昨夜、ミカゲと二人でこの月を見た。
あの時は、ただ隣にいてくれることが嬉しかった。
でも今は、彼のことを考えると、胸の奥が甘く痛む。
「……うち、これから、どんな顔して三人に会えばええんやろ……」
一人ごちて、大きくため息をつく。
明日からの学園生活を思うと、楽しみな気持ちと、途方もない不安がごちゃ混ぜになって押し寄せてくる。
恋なんて、まだよく分からない。
でも、確かに自分の心の中に、今までとは違う何かが芽生え始めているのを感じていた。
まふゆは、熱くなった頬を両手でぱちんと叩く。
「……あかんあかん!今はそんなこと考えんと、はよ寝な!」
自分に言い聞かせるように呟き、再びベッドへと戻る。
しかし、一度回り始めた思考は、そう簡単には止まってくれない。
三人の顔と、告白の言葉が、エンドレスで頭の中を駆け巡る。
まふゆの、長く、そして眠れない夜は、まだ始まったばかりだった。
第九話・了




