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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第九話 少女は告げられる
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9-7




翌朝、一限目の開始を告げるベルが鳴り響く。

A組の教室に、二つの人影が現れた。


「おお、まふゆ、ミカゲ!」


レオンハルトが弾けるような声を上げ、席を立って駆け寄る。その表情には、安堵と喜びが溢れていた。


「良かった……本当に、良かった……!」


セリウスも席から立ち上がるが、その足取りはどこか重い。まふゆとミカゲの姿を見て安堵しながらも、自分がしてしまったことへの罪悪感が、彼の心に重くのしかかっていた。


「まふゆ、もう平気なのね?」


シャノンも、珍しく素直な声でまふゆに呼びかける。その金色の瞳は、心配と安心が入り混じった複雑な色を湛えていた。




「みんな……ごめんなさい、心配かけてしもて……」


まふゆは申し訳なさそうに頭を下げた。その白い髪が、朝の光を受けてきらきらと輝く。


「謝ることなんて何もないさ! 無事でいてくれただけで、十分だ」


レオンハルトはまふゆの肩を力強く叩くと、ミカゲの方へと視線を向けた。


「お前もだ、ミカゲ。あんな無茶をして……もう二度とするなよ」


その声には、友への心配と、少しの怒りが混ざっている。ミカゲは、いつもの無表情のまま、小さく頷いた。


「……ああ」


そして、自分の席へと向かおうとするまふゆの背中を、そっと手で押す。まるで、彼女が倒れないように支えているように。

その仕草を、セリウスは複雑な表情で見つめていた。




「……まふゆ」


セリウスが、震える声で呼びかける。

まふゆが振り向くと、彼は深く頭を下げていた。


「僕は……君に、取り返しのつかないことをしてしまった。どんな言葉で謝っても、許されるとは思っていない。でも……本当に、すまなかった」


その声は、悔恨と自責の念で満ちていた。

まふゆは、困ったように微笑むと、セリウスの前に歩み寄る。


「セリウスさん……!顔、上げて……あれは、セリウスさんのせいやないです……!」

「でも……!」

「魔導機に、心を操られてしもただけ。本当のセリウスさんは、優しくて、ええ人やって、うちはちゃんと知ってる……!」


まふゆの言葉に、セリウスの瞳が揺れる。

彼は、まふゆの優しさに救われると同時に、その優しさが自分への罰のようにも感じられて、胸が苦しくなった。


「……ありがとう、まふゆ。でも、僕は……」




セリウスがまだ何か言おうとした時、教室の扉が開いた。


入ってきたのは、一限目の担当教師、ガレオスだった。彼は教室に入るなり、まふゆとミカゲの姿を見て豪快に笑った。


「おお!二人とも復帰か!良かった良かった!授業前に医務室に様子を見に行こうと思ってたんだが、その必要はなかったようだな!」


ガレオスの明るい声が、教室の重苦しい空気を少しだけ和らげる。


まふゆは、ほっとしたように微笑んだ。ミカゲは相変わらず無表情だが、その視線は常にまふゆの方を向いている。


レオンハルトはそんなミカゲの様子に気づき、苦笑した。

シャノンは自分の席に座りながら、チラリとセリウスの様子を窺う。彼はまだ、自分を許せていないようだった。




「さあ、グラウンドに出るぞ!」


ガレオスが豪快に笑いながら教壇を叩く。その声に、生徒たちが次々とグラウンドへと向かった。


まふゆも外に出ようとすると、後ろからミカゲの手がそっと背中に添えられる。まるで、転ばないように支えるように。


「……ミカゲ」


小さく名前を呼ぶと、彼はわずかに頷いた。

その仕草に、まふゆの頬がほんのり赤く染まる。


ようやく、日常が戻ってきた。

それでも、まだ完全に元通りというわけではない。セリウスの心の傷も、エドウィンへの警戒も、まだ消えてはいない。


それでも今は、仲間が揃っている。

それだけで、まふゆの心は少しだけ軽くなった。




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