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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第九話 少女は告げられる
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9-6




「……ミカゲさん、もう、大丈夫なん?」


まふゆが心配そうに見上げると、ミカゲの表情がわずかに変わった。

いつもの無表情とは違う、どこか不機嫌そうな色が浮かぶ。




「……さん、か」


低く、呟くような声。

その声音には、明らかに不満が滲んでいた。


「え……?」


まふゆが首を傾げる。ミカゲは、まふゆの白い髪を撫でていた手を止め、じっと彼女の菫色の瞳を見つめた。


「昇級試験の時、あんた、俺のこと呼び捨てにしてただろ」

「……え、あ……」


まふゆの頬が、ぽっと赤く染まる。

確かに、あの時は咄嗟に「ミカゲ」と呼び捨てにしていた。彼が倒れた時、無我夢中で、そんな呼び方になっていた。


「あ、あれは、その……咄嗟に……」

「なら、今もそう呼べ」


ミカゲは、まふゆの頬に手を添えた。その手のひらは、不思議と温かい。


「まふゆの口から、俺の名前を聞きたい。『さん』なんて余計なものは、いらない」


その言葉には、普段の彼からは想像もできないような、強い執着が込められていた。

まふゆは、ミカゲの黒い瞳に映る自分の姿を見つめる。彼の瞳は、いつもより少しだけ熱を帯びているように見えた。


「……で、でも……」

「嫌か?」


ミカゲの声が、わずかに低くなる。

その声音に、まふゆは慌てて首を横に振った。


「嫌、やないよ……!せやけど……」

「なら、呼べ」


有無を言わさぬ口調。

まふゆは、小さく息を呑んで、唇を震わせた。




「……み、ミカゲ……」


か細い声で、彼の名前を呼ぶ。

その瞬間、ミカゲの表情がふっと緩んだ。それはほんの一瞬だったが、まふゆには確かに見えた。彼が、笑ったのだと。


「……ああ。それでいい」


ミカゲは満足そうに頷くと、まふゆの頭をもう一度優しく撫でた。


「これからは、ずっとそう呼べ。約束だ」

「……う、うん……」


まふゆは顔を真っ赤にしながら、小さく頷いた。


医務室の静寂の中、まふゆの鼓動だけが、やけに大きく響いているように感じられた。




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