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白の少女はこの世界に愛される  作者: 有氏ゆず
第九話 少女は告げられる
114/173

9-3




授業の途中、美術室の扉が静かに開いた。


入ってきたのは、セリウスとシャノンだった。二人ともまだ顔色は優れないが、自分の足でしっかりと歩いている。


「セリウス!シャノンも!」


レオンハルトが弾かれたように顔を上げ、二人の姿を認めて安堵の息を漏らした。


「おや、遅刻かい?まあ、美を追求する者にとって時間は些末な問題だがね」


アルフは教壇からそう言って片目をつぶって見せる。




「すまない、兄さん。心配をかけた」


セリウスは力なく微笑むと、自分の席へと向かう。シャノンは無言でそれに続いた。


教室に戻ってきたものの、セリウスは暴走した時の記憶が断片的に蘇るのか、時折苦しげに顔を歪めている。


シャノンはそんなセリウスの様子を、気づかれないように横目でちらりと見つめていた。


「まふゆんとミカゲっちは、まだなの?」


心配そうに尋ねるリリアに、セリウスは静かに首を横に振った。


「ああ……二人とも、まだ眠ったままだ」


その声には、深い悔恨の色が滲んでいる。

自分のせいで、まふゆに心労をかけさせてしまった。ミカゲはまふゆを守るために無茶をした。


その結果が、今の状況だ。セリウスは唇をきつく噛みしめ、俯いた。




レオンハルトは、弟の肩を力強く叩く。


「今は、あいつらが安心して戻ってこられるように、俺たちがしっかりする番だ」


その言葉は、セリウスに、そして自分自身に言い聞かせているようでもあった。

シャノンは何も言わず、ただ窓の外を眺めている。しかし、その耳は兄と弟の会話をしっかりと捉えていた。




A組の席は、まだ二つ、主の帰りを待ってがらんと空いている。


窓から差し込む午後の光が、その空席を寂しげに照らしていた。

いつもなら、まふゆの柔らかな声や、たまに聞こえるミカゲの静かな相槌があった場所。


その静寂が、残された者の胸に重くのしかかる。

今はただ、二人が目を覚まし、いつもの日常が戻ってくることだけを、誰もが心の中で強く願っていた。




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