8-1
朝の光が、医務室の窓から柔らかく差し込んでいる。
ちりちりと肌を焼くような陽の光に、まふゆはゆっくりと意識を浮上させた。
「……ん……」
重い瞼をこすりながら顔を上げると、そこは見慣れた自室のベッドではなかった。
白いシーツ、鼻をつく薬品の匂い、そして隣には……。
「……!」
目の前のベッドで静かに眠るミカゲの姿を見て、昨夜の出来事が一気に脳裏に蘇る。
暴走したゴーレム、ミカゲにかけた強力な支援魔術、そして力を使い果たして倒れた彼の姿。
ハッとして自分の手元を見ると、いつの間にか彼の手に自分の手を重ね、その上に頬を寄せて眠ってしまっていたことに気づいた。
「……っ!ご、ごめんなさい!」
まふゆは慌てて飛び起き、椅子をガタンと大きな音を立ててしまう。
ミカゲを起こしてしまったかもしれないと、慌てて彼の顔を覗き込んだ。
幸い、彼はまだ静かな寝息を立てており、目を覚ました様子はない。
(よかった……)
ほっと胸をなでおろすまふゆ。
しかし、一晩中彼のそばにいたというのに、自分はぐっすり眠ってしまっていた。
その事実に、申し訳なさと自己嫌悪がこみ上げてくる。
(ミカゲさんはまだ、こんなに苦しそうなのに……)
ふと、まふゆは自分の頬にかすかな温もりが残っていることに気づいた。
まるで、眠っている間に誰かに優しく撫でられたような、そんな不思議な感覚だった。
「……昼休み、また来るからね」
まふゆは眠り続けるミカゲにそう小さく囁くと、名残惜しさを振り払うように医務室のドアを静かに開けた。
ずっと彼のそばにいてあげたい。でも、授業を休むわけにはいかない。
特に、昨日の試験が無効扱いになるかもしれない今、これ以上評価を下げるわけにはいかなかった。
廊下に出ると、すでに多くの生徒たちが行き交っている。
昨日の事件は、訓練場にいた一部の生徒と教師しか知らないようで、学園はいつもと変わらない朝を迎えていた。
その喧騒が、昨夜の静寂とはあまりに対照的で、まふゆの心にぽっかりと穴が空いたような寂しさを与える。
ミカゲのいない教室。彼のいない日常。
その事実が、ずしりと重く彼女の肩にのしかかっていた。




