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ブラック ブック  作者: さだきち
黄金の平原、神罰の代償

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第五章:凱旋の余韻、静かなる旅立ち


リングベルの騎馬隊は、その後まさに「鬼神」と呼ぶにふさわしい活躍を見せた。

神の火に焼かれ、戦意を喪失した連合軍に対し、一万の精鋭は怒涛の猛攻を仕掛けた。その勢いは平原を駆け抜け、ついにはシュタインベルグ王国の領地内までをも侵食したのである。


結果、シュタインベルグ王国は降伏に近い形で和睦を申し入れ、領土の一部を明け渡すことを余儀なくされた。小国が大国を打ち破るという、歴史に刻まれるべき大勝利であった。


王セオドア率いる騎馬隊が凱旋すると、城下町は割れんばかりの歓声に包まれた。避難していた民衆も数日のうちに次々と戻り、かつてのお洒落で賑やかな街並みには、以前にも増した活気が溢れ返っていた。


「奥方ぁ、ヴェネリア王国から伝言が届きましたよ」

バルドが差し出した封書を、イゾルデは美しい瞳を細めて眺めた。

「『この度の功績を多大なるものと認め、リングベル王国との国交強化を求める』……ですって?」

「まーったく、都合がいいわね! 手を引くって言ったのはどこの誰かしら」

呆れながらも、イゾルデの口元には満足げな笑みが浮かんでいた。手元にはリングベル王からの莫大な礼金も届いている。


「しかし奥方、上手くいきましたね。毎日お祭り騒ぎだ。俺もう……これ以上は食べきれないっす!」

幸せそうに腹を叩くバルドに、イゾルデが釘を刺す。

「あんたはただの食べ過ぎよ」

「そうだぞバルド、全部食べる必要はないんだ。少しは慎め」

「またそんなこと言って兄貴! こういうのは食える時に食っとかないと。つれないこと言わないで、もっと飲みましょうよ~!」


ゴドリックは苦笑いしながらも、ふと真面目な顔でイゾルデに向き直った。

「しかし……いつまでもこうしてはいられません。奥方、『生命のしずく』はどうなさいます?」

「相変わらず堅物ねえ。そんなに急がなくても『生命のしずく』は逃げないわよ。王様が好きなだけ居ていいって言ってくれてるんだから、今のうちに英気を養っておきましょ」

「そうですね……よし、それじゃあ次行くぞバルド!」

「そうこなくっちゃ、兄貴!」


---


ところ変わって、リングベル王城の一室。

セオドア王は、窓の外を眺めながら将軍ラングに問いかけた。

「ラングよ……カスティエル殿は、まだ目を覚まさぬのか?」

「はい。医者や司祭によれば命に別状はないとのことですが、一週間経っても眠り続けておられるのは、やはりあの一撃の反動でしょうか。心配ですな」

「ふむ。この国を救った一番の功労者だ。目覚めたならば、手厚く報いたいのだが……」


そこへ、一人の兵士が血相を変えて飛び込んできた。

「大変です! 王、そして将軍! カスティエル殿が……お姿がございません!」

「何だと……!」


二人が慌てて病室へ駆けつけると、そこには主のいないベッドだけが残されていた。

「……何てことだ。何も言わずに出ていくなど。一言、礼くらい言わせてほしかったが」

セオドアは寂しげに、だがどこか誇らしげに微笑んだ。

「ドラゴンの王族は欲が無いのだな。……恩に着るぞ、カスティエル」

王は遠い空を見つめ、去りゆく友の武運を祈った。


---


その頃、カイエンは独り、ピーティンへと続く街道を歩いていた。

かつては敵地であったその道も、今はリングベルの領土として繋がり、平和な風が吹き抜けている。

だが、カイエンの目に迷いはない。右眼の疼きを眼帯で抑え、彼はただ前を見据える。


目指すは、カミラとエルムが待つ、終わりの場所。

カイエンは淡々と、しかし確かな足取りで、次なる戦地への一歩を踏み出した。


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