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ブラック ブック  作者: さだきち
黄金の平原、神罰の代償

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第四章:精霊の咆哮、神罰の痕跡


カイエンの右眼から放たれた巨大な光弾は、平原を埋め尽くす連合軍十万の中央へと突き刺さった。


直後、平原は音を失い、世界は純白の閃光に塗りつぶされた。

着弾地点の温度は一瞬にして摂氏数万度を超え、空気そのものが膨張する。兵士たちの悲鳴すら届かない。人も、馬も、鋼鉄の鎧も剣も、すべてが物理法則を無視して蒸発し、原子の塵へと還っていった。


数瞬遅れて、大地を縦に振るうような巨大な地震が襲った。

衝撃波は同心円状に広がり、十万の軍勢をなぎ倒していく。リングベル軍も例外ではない。先頭を走っていたセオドア王とラング将軍、そして精鋭の騎馬たちは、猛烈な突風に巻き込まれ、木の葉のように空中に放り出された。


光が収まった後、そこには平坦だったはずの平原はなく、天を仰ぐような巨大なクレーターが口を開けていた。


「なんだ……! これは、一体何だというのだ!!」

シュタインベルグのグリーバル将軍は絶叫し、ひっくり返った椅子から転げ落ちた。

だが、その傍らに立つジゼは違った。彼は立ち上がり、眼前に広がる地獄絵図を恍惚とした表情で見つめ、感動の涙さえ流していた。

「おお……これこそ神の鉄槌。精霊の咆哮……。ヴァルガス様が命を賭して再現しようとした精霊戦車は、やはり間違いではなかった!」


城壁の上では、カイエンが眼帯を片手で押さえ、フラフラと立ち上がっていた。その右眼からはまだ、制御しきれない熱が陽炎となって立ち昇っている。

「バルド……ゴドリック……! 俺を押さえろ! 早くしろ!!」

転がっていた二人は、恐怖で膝を震わせながらも、這いつくばるようにしてカイエンに駆け寄った。しがみつくようにして、彼の身体を固定する。


「イゾルデぇ!! もう一発だ!!」

カイエンの怒号に、イゾルデの指示が矢のように飛ぶ。

「バルド、もっと踏ん張って! いいわね? ……眼帯を外して!」

「二人とも、肩を離さないで! ゴドリック、頭を固定して! 撃て!!」


二射目の光弾が、逃げ惑う連合軍の残党を無慈悲に襲った。

再び世界が灼熱の光に包まれ、大地が悲鳴を上げる。「壊滅的」という言葉すら生ぬるい。十万を数えた軍隊は、もはや組織としての機能を完全に喪失していた。


ジゼは勝敗に興味を失ったかのように、軍を見捨てて足早に戦場を立ち去った。

「あ、あの野郎……!」

グリーバル将軍もまた、腰を抜かし、這うようにしてその後を追うしかなかった。


一方、落馬していたセオドア王は、しばらく呆然とクレーターを眺めていたが、やがて己の頬を強く叩いた。

「立て! 立てぇい!!」

王は愛馬を叱咤して飛び乗ると、隣に駆け寄ったラングと共に角笛を吹き鳴らした。

「我が軍に告ぐ! 勝利の時は来た! 逆賊どもを平原から掃き清めよ!」

地鳴りのような咆哮。かつての絶望は消え、一万の騎馬隊は「神の加護」を得た最強の軍勢へと姿を変えた。彼らは巨大な穴を駆け抜け、戦意を喪失して逃げ惑う連合軍の残党を蹂躙していった。


城壁の上では、カイエンが震える手で眼帯をはめ直すと同時に、糸が切れたように崩れ落ち、意識を失った。

ゴドリックはその場に尻もちをつき、下界の凄惨な光景に歯の根も合わぬほど震えている。バルドは立ち尽くしたまま、己の失態(股間の染み)に気づく余裕もないほど呆然としていた。


ただ一人、イゾルデだけは展望台の上で大の字に寝転がり、晴れ渡った空を見上げていた。

「あはは……。これが、精霊戦車の力。……いえ、これはまだ砲台ですらないわ」

彼女は握りしめた逆時計の冷たさを感じながら、遥か古の記憶を反芻する。

「かつての精霊戦車は、これの数倍の火力があったって本当……?」

天空人の末裔は、その恐るべき破壊の歴史に思いを馳せ、奇妙な高揚感と共に独りごちた。


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