私の騎士
【称号】
二条院優介:身体強化魔法の使い手
京山緑:救われた姫君
瞼がゆっくりと開き、光に慣れた視界が優介の姿をとらえた。
「……優介って、結構チートなのね」
開口一番、それだった。
優介は、まだ目を開けたばかりの緑を見下ろしながら、少しだけ眉をひそめる。
「起きて早々それか?」
「うん」
あっさりとした返事。緑は枕元に置かれたぬいぐるみをぎゅっと抱いたまま、視線だけで優介をにらむ。
「だってそうでしょ? 紅葉に勝つなんて、さすがに予想外だったわよ。そもそも、優介が戦えるなんて思ってもなかったし」
「……対人戦はな、大体負けないんだ」
「うわー、自信家」
緑は小さくため息をついて、少しだけ体を起こした。
「まあ、頼もしいのは認めるけど……ちょっとズルくない? あの戦い方。相手の精神操作とか、意識誘導とか、あげく自己暗示とか、なんかこう……インチキ臭いというか」
「正当な技術だ」
「あなたしかできない技術とか色々ズルイわよ。」
言葉の端々に、拗ねた子供のような声色が混ざる。
「やっぱりチートよ。インチキ。非常識。ついでに無神経。はい、満貫」
「ずいぶん当たりが強いな。……照れ隠しか?」
「――――ッ!」
反応は即座だった。顔がぱっと赤く染まり、口がパクパクと空を切る。
「人の、心を、勝手に、読むんじゃないわよ! この、セクハラたらしノンデリ大魔神っ!」
言い返しながら、手近にあった枕をつかんで思い切り放り投げる。
枕はふわりと宙を舞い、ポフッと優介の顔面に命中した。
「……おかげで、大事な存在を守れたんだから、いいじゃないか」
その一言に、緑の呼吸がふっと止まる。
目を見開いたまま、何も返せずに固まってしまう。
次の瞬間、耳まで赤くなった顔をばふっと布団に埋めた。
「こんっの……絶ッ対わざと、でしょ……」
声はくぐもっているが、肩は小さく震えている。
「お前が言えって言ったんだろ?」
「……あなた、いつか絶対、後ろから刺されるわよ……」
緑はプルプルと体を震わせたまま、しばらく顔を上げられずにいた。
「ねぇ…優介」
くぐもった声で、布団越しにぽつりと問いかける。
「なんだ?」
「……ゆみさんを殺したのは、誰なのかしらね?」
優介は一瞬、言葉を飲み込んだ。
「……わからない。」
「……そう」
そのまましばらく沈黙が落ちる。
やがて緑は、布団の中から静かに上半身を起こし、ベッドの縁に足を下ろした。
「もう、大丈夫なのか?」
問いかけに、小さく頷く。
「ええ。時間がないわ」
「……本当は、お前にはこのまま、部屋に篭っていて欲しいんだがな」
「ダメよ。だって――あなたの白金貨、集めなきゃいけないもの」
振り返った緑の瞳には、どこか諦めに似た光が宿っていた。
「ここまで来ちゃったら、正直、私なんて役に立たないわ。
優介が本気で集める気になれば、きっとすぐ揃う。……でも、そうしないのよねあなたは。」
優介が答えないまま、緑は続けた。
「だったらーー
私が危ない目に遭えば、優介、本気になってくれるんで しょう?」
とても十歳とは思えないような、ひどく挑発的で妖艶な笑みを浮かべてしなをつくり、優介を試すような視線で見据える。
「おい、緑……!」
「私はあなたみたいに“チート”じゃないの。だからね、使えるものはなんでも使うのよ、あなたの大事な存在だって利用させてもらうわ。」
唇に人差し指を当てたまま微笑し、緑は堂々とそう言った。
そして最後に、ひとこと。
「信じてるわ。私の――騎士様」
更新予定は未定です。
現状では打ち切りとさせていただきます。
ここまで読んでくださった方心より感謝致します。




