VS長月紅葉(後編)
二条院優介:護衛騎士
京山緑:狙われた幼女
真田一馬:略奪者
長月紅葉:護衛騎士
「Code bestätigt.」
「Protocol Zone.」
たったそれだけの言葉。けれど、空間が凍りついたようだった。
鼓動の音すら遠のいていく。
優介の体から放たれる「気配」が、まるで別人のものにすり替わっていた。
無感情。無慈悲。無機的。それでいて、異常なまでに静かで、正確。
動く気配はまだないのに、紅葉の指がほんのわずかに震えた。
これは本能だ。理屈ではない。
この男が、何かを“引き金”を引いた。そう警告を鳴らしていた。
やがて――優介が、目を開いた。
紅葉の瞳が細くなる。優介を見つめるその目に、わずかな驚きと、警戒が滲んでいた。
「……軍にいたとき、見たことがあるわ。催眠暗示でしょ、それ」
彼女の声は冷静だったが、その指先には、さきほどまでとは違う種類の緊張が走っていた。
優介は小さく笑う。
「ああ。お前の言うとおり、戦闘用に体を作ってないからな」
そして、ゆっくりと一歩、紅葉に歩を進める。
「……足りない分は、埋めさせてもらった」
言葉が落ちた瞬間、空気がまた変わった。
紅葉の目が鋭くなる。
再び、静かな火花が散るような沈黙が流れた。
そして――
二人の体が、ほぼ同時に動いた。
「――え?」
紅葉が思わず声を漏らした。
その瞬間、鈍い衝撃音が響く。
捌こうとした腕ごと吹き飛ばされ、構えが崩れる。完全にガラ空きになった胴へ、優介の拳が初めてクリーンヒットを刻んだ。
身体が仰け反り、紅葉が一歩、二歩と後退する。
優介は息ひとつ乱さずに言った。
「悪いな。俺の勝ちだ」
紅葉が、脇腹を押さえながら悔しげに唇を噛む。
「……一撃入れたぐらいで、勝ったつもり?」
「違う」
優介の目が、冷たく、確信に満ちていた。
「今の一撃が入るなら、それでもう俺の勝ちなんだ」
沈黙。
そして、ゆっくりと、口の端だけで笑う。
「お前の攻撃はもう俺に届くことはない。」
「……もう、解析は終わった」
ぼやけていた。輪郭が滲んで、現実に膜がかかっているみたいだった。
耳鳴りがして、音も掠れて聞こえる。
それでも、目は逸らせなかった。
私の視界の奥で、誰かが戦っていた。
優介だった。
あの人が、私のために――私一人のために、本気で怒って、体を張って、戦っている。
信じられなかった。
でも、それ以上に……嬉しかった。
痛くて、怖くて、動けないはずなのに、胸の奥があたたかくなった。
こんなふうに誰かに怒ってもらえるなんて。
こんなふうに、誰かが本気で私を守ろうとしてくれるなんて。
そんな人今までいなかった。
そんな人がいるなんて、ずっと、知らなかった。
ああ……芹香ちゃんの気持ち、わかるなぁ。
これは…ずるいよね。
一緒に、優介の被害者の会でも作ろうかな。
ふと、思い出した。
小江さんが言ってたっけ。
「優介くんが本気になったら、できないことなんてないわよ」って。
今ならそれすっごくわかる。
負ける気なんて全くしない。
……私、今、あの人の“本気”になれてるんだ。
すごく嬉しくて…すごく誇らしい。
優介の中にも私が居るんだ、と思うとこんな状況なのににやけてしまう。
本当に、悪い男だよね。
【獲得称号】
二条院優介:身体強化魔法の使い手 ← NEW




