小江のスキル
【称号】
二条院優介:緑の理解者
京山緑:行動力カンスト幼女
柊小江:ミステリアス少女
時計の短針が、ちょうど二十時を指していた。
夜の帳が館を包み込む中、食堂の一角――照明の下に、ふたりの影が並んでいた。
優介と緑。
テーブルには食べかけの弁当と、空になった飲み物のペットボトルがひとつずつ。
だが、彼らの目は目の前の食事ではなく、出入口の向こうへと向けられていた。
その扉が、ゆっくりと開く。
現れたのは、小江だった。
彼女はひと呼吸置いてから、食堂に足を踏み入れる。
優介と緑は周囲をさりげなく見回す。間違いないーー今回は1人だ。
隠す様子もなく、小江はまっすぐにふたりの方へ歩み寄る。
「こんばんは。……最近、ふたり、よく一緒にいるのね」
その声音は、軽やかで親し気で、何気ない物であった。
優介と緑は、視線を交わしながら、どちらからともなく小さく会釈した。
「まあな。緑と悪巧みしてるんだ」
冗談めかして口にすると、小江は眉をひとつ上げ、ふっと笑った。
「あらあら。こんな小さな子、変な道に引き込まないでよ、優介くん?」
そう言いながら、いつものように自販機で弁当と飲み物を選び優介からひとつ開けた席へと座る。
小江の態度には、緊張の色も警戒のそぶりも見えない――それが、むしろ彼女らしい。
その隣で、緑がわずかに顎を動かす。
無言のまま、優介に視線で合図を送っていた。
(行く?)
問いかけるような瞳に、優介は一瞬だけ視線を返す。
そして、ほんのわずかに首を横に振った。
(……いや、もうちょっと待て)
そう視線で返す。
小江は、弁当の蓋をあけ、立ち昇る湯気を軽く息を吹きかけて払いながら、手を合わせた。
「小江、聞きたい事がある。」
「なぁに?優介くん。」
「お前、あの学園にいたんだよな。」
「食事中にする話題にしては無粋すぎないかしら?ご飯はもっと楽しく食べる物だと思うわよ。」
「緑から聞いてる。」
「そうでしょうね。」
「……ならお前、何の能力があってそこに入ったんだ?」
「あら?能力があるとは限らないじゃない?普通の生徒だって大勢いるわよ?」
「とぼけるな。俺の能力を知ってるんだから、上層関係者に決まってるだろ」
「私、優介くんの能力を知ってるなんて、言ったかしら?」
小江はカップを箸で魚の切り身を口に運び、涼しい声で返す。
「知ってるだろ」
「ふふ、どうかしらね」
やっぱり答える気はないらしい。
優介はため息をついて、心中でひとつの結論にたどり着きかける。――やはり襲撃するしかないのか、と。
その時、緑が助け舟を出した。
「小江お姉ちゃん、なんかすごい力持ってるの? 緑も知りたい!」
緑が、ぬいぐるみを抱えたまま身を乗り出して言った。
小江は、その姿に柔らかく目を細める。
「緑ちゃん、可愛いわね。……どこかの野暮なお兄さんとは大違い」
そう言って、緑の頭をぽんぽんと撫でる。
この野郎…と優介は心の中で思ったが、言い返す気にもならず黙って見ていた。
「いいわ。緑ちゃんになら教えてあげる。……私はね、目が良いのよ。ちょっと、かなり特別な目をしているの」
「特別な目? すっごく遠くまで見えるの?」
「そうね、視力もいいわ。でもそれ以上に、普通の人には“見えないもの”が見えるの」
優介は興味を引かれ、口を挟んだ。
「……4色型色覚か?」
小江は、くすりと笑い、緑を見たままわざとらしく言った。
「あら、緑ちゃん? 私たちの秘密の会話を、盗み聞きしてるお兄さんがいるわよ?」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
緑に釘を刺され、優介は撫然顔でそっぽを向く。
その様子に小江がくすくすと笑いながら、説明を続けた。
「優介くんが言ってたのは“テトラクロマット”――4つ目の錐体細胞を持つ人のことね。普通の人の100倍の色を識別できるとも言われてる」
「でも私はね、“さらにもうひとつ”持ってるの。“E錐体”って呼ばれてるらしいわ」
「イーすいたい?」
首を傾げる緑に、小江はうなずいた。
「そう。色じゃないの。言葉にしにくいんだけど……生き物が持ってる“エネルギー”みたいなもの。通路で“誰が通ったか”とか、“どこで立ち止まったか”とか、そういうのが――残って見えるのよ」
「え、すご……! 透視とか?」
「ううん、違うの。電磁波とか生体光波調とか詳しいことはわからないけど……気配の痕跡、そういう生物の持つ、“名残”を拾ってる感じかな。わかりやすく言うならそうね――」
小江は一拍置いて、静かに微笑んだ。
「“魂”が、見える。」
「……かしら?」
【獲得称号】
柊小江:魂が見える人 ← NEW




