襲撃計画
【称号】
二条院優介:極悪人
京山緑:極悪人
「まずは、二枚の箱からだ。」
「なんで?」
「二枚箱と一枚箱、それなら俺の金貨で開けられるからな。……なるべく節約した方がいいだろ?それでも入ってなかったら、三枚の箱を頼む。」
「……わかったわ。でも、節約するのが正しいとも限らないわよ?あの時これがあったら、ってなるかもしれないし。」
緑はつぶやくように言って、手に持ったぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
「だけど……今は考えても分からない。念のためだ。」
そう言いながら、金庫の中から金貨を二枚取り出す。
重みのある硬貨を、ひとつずつ箱の前面に設けられたスロットに差し込むと、かちゃりと小さな音が鳴った。
ゆっくりと箱の蓋を持ち上げる。
「優介、気をつけなさい。それ……開けたあと、閉まったらもう二度と開かないわよ。」
「え?」
振り返った優介の手元で、箱の蓋が突然、勢いよく閉まりかけた。
「うわっ!」
慌てて手を差し込み、反射的に蓋を押し返す。だが、指の甲を軽く挟まれてしまった。
「いってぇ……!」
鈍い痛みに顔をしかめながら手を引く。ミミックに噛まれたみたいになってしまった。全部小江のせいだ。
優介は痛む手をさすりながら、慎重にもう一度、蓋を持ち上げた。
「もうちょっと早く言ってくれ……」
そうぼやくが、緑は肩をすくめただけだった。
箱の中には、さらにもう一つ、小ぶりなアルミケースが仕込まれていた。
留め具を外し、慎重に蓋を開ける。中には、透明なアンプル一本と、個包装された注射器、そして折りたたまれた紙片が収められていた。
【REVALOXIN:レヴェロキシン】
第三世代型・神経低反発性暗示誘導薬
用法:静脈内投与(5ml / 単回)
効果発現時間:約3〜5分
効果持続時間:30分〜90分
対象者の自律神経反応を緩和し、外部暗示への受容性を大幅に向上させます。
※投与中は意識レベルの変動があります。介助者の観察を推奨。
※本薬品は臨床認可を受けておらず、使用は全て自己責任のもと行ってください。
開発:白嶺綜律高等教育研究院 特別技能科研究部
紙片を読み終えた優介は、無言でアンプルを持ち上げ、光にかざした。
無色透明の薬液が、かすかに揺れる。
「レヴェロキシン……まさか、こんなものがここにあるとはな」
呆れとも驚きともつかぬ声で、優介はそう漏らした。
横から覗き込んだ緑が、面白がるように言う。
「つまり、“本物”ってこと?」
「ああ、間違いない。《レヴェロキシン》。従来の薬剤なんかと違って、神経系への負荷が極端に少ない。そのくせ、暗示の受容性だけは異常なほど高くなる。催眠補助薬としては、理論上完成系。学園でも存在は知ってたが……実物は初めて見た。」
「さすが、優介の“箱”ね」
緑は、にやりと唇の端を持ち上げた。
「これがあれば、小江さんでも催眠にかけられる……?」
「法律、善悪、倫理、常識、全てに目をつぶれば可能だ。」
「目の前真っ暗どころの騒ぎじゃないわね。けど、それって命より大事なものかしら?」
「……お前の覚悟、決まり過ぎだろ。」
「で、どうするの? 使うのなら、タイミングは限られてるわよ」
ぬいぐるみを抱いたまま、緑は首を傾げる。
「襲撃するんだろう? 目撃者なんかいたら大変だぞ。どう考えても、悪いのは俺らだ」
「もちろん。チャンスがあったら――って話だけどね」
緑は視線を宙に向け、記憶をなぞるようにつぶやいた。
「小江さん、優介と違って時間にきっちりしてるのよ。13時と20時。私が知る限り、毎日その2回、最大でも5分程度のズレで食堂に来てる」
「俺と違ってって要る?」
「ふふっ。事実でしょ?」
小さく笑ったあと、緑はわざとらしく人差し指を立てた。
「その2回のうち、もし誰もいないタイミングがあったら、って条件で考えましょうか。……とりあえず、次は13時ね。あと1時間後」
優介に向き直る。
「準備、しなさい」
【獲得称号】
なし




