VS真田一馬(中編)
【称号】
二条院優介:セクハラ大魔神
真田一馬:勝ち組ギャンブラー
青峰透華:兼業ディーラー
【7ラウンド】
場に静かな空気が流れる中、7度目のディールが始まった。
「アンティ1、ブラインド1枚ずつ。じゃ、ディールいくよ」
透華がカードを切り始める。無駄のない所作が、空気の密度をわずかに高めていく。
銀貨の残りは、優介23枚。真田、74枚。
5枚ずつ配られたカードを手にしながら、ふたりは互いに顔色をうかがうこともなく、ただ静かに動く。
「チェック」
「……チェック」
開幕は静かな立ち上がり。わずかに、真田の口元が持ち上がる。
「優介から、ドローどうぞ」
透華に促され、優介は手札から3枚を滑らせる。入れ替えられた新たなカードを、目線だけで確認しながら、淡々と揃えた。
「2枚で」
真田は短く言い、2枚を差し出す。その手付きに淀みはない。軽口もなく、無駄もない。
透華が残りのカードを配り終えると、再び、無言のまま数秒が過ぎた。
「……チェック」
優介がテーブルを軽く叩く。
続けて、真田は──ゆっくりとカードを伏せた。
「フォールド。ったく、やってらんねぇな」
そう言いながら椅子の背にもたれかかり、頬杖をつくような格好で笑う。その表情に焦りはなく、どこか飄々とした余裕が滲んでいた。
透華がテーブルの中央から銀貨1枚を拾い、優介の前に滑らせる。
「ポット1枚、優介の勝ちっと」
テーブルにわずかにざわめきが走る。大きな反応はないが、その空気のわずかな揺らぎが、局面の変化を告げていた。
「やった……」
小さな声が漏れる。緑が両手をぎゅっと握りしめ、微かに震えるようにしていた。希望と安堵が、その小さな身体からにじみ出ている。
真田が軽く口笛を鳴らし、カードを指で弾く。
「初勝利おめでとう、坊ちゃん」
その言葉には、どこか冷笑と侮蔑が混じっていた。
優介は無言のまま、視線を伏せて手札を揃え直す。表情は動かず、口も開かない。
淡々と、次の勝負の準備だけが、音もなく進んでいった。
【10ラウンド】
場に重苦しい空気が垂れ込める中、10回目の勝負が始まった。
透華が銀貨を確認し、ディーラーとしての手続きを淡々とこなしていく。
「アンティ1、ブラインド1枚ずつ。じゃ、ディールいくぜ」
銀貨がテーブルに投げられ、カードが配られる。乾いた音が一つずつ、場の静けさを刻んでいく。
──優介、残り11枚。真田、86枚。
誰も言葉を発しない。ただ、視線が卓上に注がれる。真田の顔には勝者の余裕が浮かび、優介はいつも通りの無言のまま、伏せた視線でカードを見つめている。
「チェックだ」
「……俺も、チェック」
ドローフェーズ。
「優介、何枚替える?」
「3枚」
「じゃあ次は真田、何枚?」
「1枚だけでいい」
ポストドロー。
「……チェック」
「よし、こっちはベットだ。3枚」
真田が銀貨を弾くように置く。その手の動きには、完全に主導権を握った者の軽やかさがあった。
数秒の静寂。
「……フォールド」
優介は、淡々とカードを伏せるだけだった。
「よっしゃ、また俺の勝ちだな」
銀貨を回収しながら、真田があからさまに口角を上げる。その表情には、勝利を確信した優越感しかなかった。
「もうそろそろ終わりか? 銀貨も底だろ? なあ、お坊ちゃんよ」
誰も笑わない。緑は唇を噛み、小さく身を縮こまらせている。透華の目にも、わずかながら不快の色が差していた。
佐伯は目を伏せ、小さく首を振った。誰もが思っていた──もう、これ以上は見ていられない、と。
だが、その時。
優介がぽつりと口を開いた。
「……随分おしゃべりだな。勝負の最中にペラペラ喋ってて、気が散らないのか?」
その言葉に、真田は「は?」と鼻で笑う。
「いいじゃねえか。どうせお前は喋っても勝てねえんだし。まあ、せいぜい喋って気を紛らわせろや。残り、あとちょっとだぜ?」
優介は黙って真田を見た。
その表情は変わらず無機質。だがほんの僅か、口元が緩む。
「そっか。なら……こっちもおしゃべりさせて貰おうか。」
わずかに声のトーンを上げて、優介が言った。
【獲得称号】
なし




