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異世界に行ける可能性は微粒子レベルで存在している  作者: Lemuria


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38/66

VS 真田一馬(前編)

【称号】

二条院優介:セクハラ大魔神

真田一馬:勝ち組ギャンブラー

青峰透華:兼業ディーラー

柊小江:ミステリアス少女

京山緑:処刑は得意

【1ラウンド】


「ファイブカード・ドロー。アンティ1枚、先に銀貨を」


 透華の声に、優介と真田が1枚ずつ銀貨を中央に出す。


 無言のまま差し出した優介に対し、真田はにやにやとした笑みを浮かべながら銀貨を弾いて置く。


「へへっ、また勝ちを譲ってくれよ“坊っちゃん”」


 透華は冷ややかにそのセリフを受け流しつつ、ディールを開始する。


「ディール・ファースト」


 5枚ずつ、カードが静かに配られていく。


 優介は一言も発さず、配られたカードをただ手に取り、そっと扇状に広げる。視線は伏せたまま、顔に一切の感情を浮かべない。


 一方の真田は、カードを見た瞬間、わずかに眉を上げると口元に笑みを浮かべた。小さな咳払いとともに、カードの端をトントンと揃える。


「さて、と。こっちは──2枚交換だ」


「ツー・ドロー、確認」


 透華が2枚を受け取って捨て札にし、新たなカードを配る。


「お前は?」


 真田が揶揄するように言葉を投げかけるが、優介は何も言わずに3枚のカードを差し出す。


 透華が確認して、3枚交換。


 再び沈黙。カードを整える優介の手には迷いがなかった。


「じゃあ──ベットいくぜ。3枚」


 真田が銀貨を3枚積み上げる。音が乾いた響きを持ってテーブルに落ちる。


 視線が優介に集まるが、彼は無言のまま同額をコールする。


「コール、3枚。ショウダウン」


 二人はカードを開く。


 真田が並べたのは:

 ♦Q ♠Q ♠8 ♣8 ♦3(ツーペア)


 優介の手札は:

 ♣9 ♥9 ♦6 ♣J ♠2(ワンペア)



「真田の勝ち。ポット、計8枚」


 透華が淡々と判定を下すと、真田は満足そうに銀貨をかき集めた。


「やっぱ医学生ってのは理屈ばっかで、勝負事には向いてねぇんだよなぁ。もうちょい計算通りにいくと思ったか?」


 煽りながら、指で銀貨を弾くように弄ぶ。


 優介は相変わらず無言のまま、表情ひとつ変えずに次のカードに視線を落とした。




【2ラウンド】


 透華が軽やかにカードをシャッフルする。カットを終えたあと、卓に5枚ずつカードが配られた。


「第二ラウンド、アンティは変わらず1枚ずつ。さあ、ベットの時間だ」


 真田はまたも余裕の笑みを浮かべながら、手札をちらと見た。


「ふっ……ツイてるな、俺。ま、これも実力のうちか」


 銀貨を2枚、卓に滑らせる。


「レイズ2枚。おい坊ちゃん、降りた方が身のためだぜ?」


 煽るような声が飛ぶが、優介は無言で応じた。ただ、手札を見て──それから黙ってコールの銀貨二枚を差し出す。


 その静けさが、逆にざわめきを呼ぶ。


 ──何を考えているのか、誰にも読めない。


 透華が静かに頷き、交換フェイズに入る。


「じゃ、カード交換いくよ。真田、何枚?」


「……ワン。残り1枚、引くぜ」


「了解。優介は?」


 優介は視線も向けず、わずかに手札を浮かせて示す。


「……ノードロー」


 ざわり、と空気が動く。


 最初から完成されていたのか、それとも交換すら無意味と踏んだのか──どちらにせよ、勝負にかける胆力だけは相当なもののように見える。


 真田は口の端を引きつらせる。


「へえ、随分強気じゃねぇか。ま、ブラフの線も濃厚だけどよ。よし、ベットいくぜ」


 真田は銀貨三枚を一気に積み上げた。


「レイズ、スリー」


 透華が目を細めながら、ちらと優介を見る。


 優介は、相変わらず。動きひとつ、表情ひとつ変えず、手元の銀貨を静かに3枚、場に差し出した。


 コール。


「じゃ、ショウダウンだな」


 真田が手札を広げる。


「ジャックス・アップ。まあまあってとこか」


 ジャックのツーペア。悪くない。


 だが、優介は無言で手札を伏せたまま、ゆっくりと立ち上がる。


 それは──フォールドの合図。


「おっと? おいおい、降りるのか? ノードローからのフォールド? なんだそれ、はったりだったのかよ?」


 真田が声を上げて笑った。勝利の確信が、言葉に色をつける。


「ま、坊ちゃんらしいって言えばらしいか。親の金はあっても、賭けの度胸はねぇってか?」


 ギャラリーがざわつくなか、優介は静かに椅子へ腰を下ろす。まるで何事もなかったかのように、無感情に手札を伏せた。


 その動きは──あまりに機械的で、あまりに人間味がない。


 沈黙と無表情。真田がますます気をよくして、勝者の余韻に浸る横で、優介は淡々と次の勝負の準備を整えていた。




【3ラウンド】


 ディーラー席で透華が手札を配る。空気は既に張り詰めていたが、三度目ともなれば、それは緊張というよりも、じわじわと積もる焦燥と重圧だった。


「アンティ1枚、ブラインドなし、レイズ自由。スタートね」


 二人はそれぞれ銀貨を中央へ投じ、ディールが始まる。


 配られたカードをちらと見た真田の口元が、わずかに緩む。すぐさま彼は、カードを軽く叩いてテーブルに伏せた。


「コールで」


 優介は無言のままカードを見下ろし、やや間を置いてからうなずく。銀貨を1枚、真田と同じだけ中央に置いた。


「ドローは?」


 透華の問いに、真田はカードを一度宙で回してから、2枚だけ伏せて出す。


「ツー・カード。2枚チェンジで」


「了解。……2枚」


 優介は3枚を捨てた。カードの裏面がテーブルに落ち、ぴしりと音を立てる。透華が代わりに3枚を新たに配ると、優介はそれをゆっくりと手札へ引き寄せた。


「さて……ベットに入るぜ。3枚だ」


 銀貨3枚。序盤にしてはやや重い賭け。


 だが真田の手つきには、迷いも含みもなかった。強気なその動きに、ギャラリーの視線が揺れる。


 優介は反応しない。ただ指先でカードの角をつまみ、視線を落としたまま、じっとテーブルに向き合っている。


「……」


 そして――静かに、コール。


 合計8枚の銀貨が、場に積み重なる。


「ショウダウン。手札、オープン」


 透華の合図に従い、真田がカードを開く。


「ジャックス・アンド・ファイブス。ツーペア、だな」


 真田は勝利を確信した笑みを浮かべながら、優介のほうを見やる。


 優介は、静かに手札を伏せた。スリーカードにも届かない、ハイカード。


 沈黙。


「……チップ、頂き」


 真田が指を鳴らし、銀貨をさらっていく。手つきは慣れていた。勝負に慣れている者の、勝ち方を知る者のそれだった。


「おーい優介、お前ちょっとヤバくねぇか?」


 透華が冗談めかして言うが、優介は何も答えない。ただ、淡々と次のディールに備え、指先をテーブルに揃える。





【6ラウンド】


 透華の配るカードに、優介は無言で目を落とす。

 静かなやりとりの中、優介の手はワンペア。真田はスリーカード。


「おいおい、またかよ。坊ちゃん、運も金もついてねぇな」

 真田は銀貨をさらいながら、口元を歪めた。


 テーブルの銀貨が吸い込まれるたび、周囲の空気は徐々に固まっていく。


(4ラウンド目はツーペアにツーペアで真田のキッカー勝ち。5ラウンド目は優介がドロー狙いに失敗し、ワンペア止まり)


 優介の目は、相変わらず感情を映さないまま真田を見ている。


「おいおいおい、もうすぐ一桁か? 今度は医療費でも賭けてくれるのかよ?」


 真田の挑発に、緑が小さく身をすくめる。


 緑は椅子の上で、ぎゅっと両手を握りしめていた。小さな指が白くなるほど力がこもっている。

 その瞳がじっとテーブルの上を見つめ、瞬きすら忘れているようだった。


 そんな緑に、隣からそっと声がかけられる。


「……心配そうね」


 小江だった。

 腕を組んだまま、表情は相変わらず読めない。けれどその声は、不思議と柔らかい温度を帯びていた。


「……だって、お兄ちゃん、全然勝ててない……」



 小江は、緑の頭を撫でて柔らかに笑いかけた。


「ふふ、よく見てるといいわよ。本気になった優介くんに勝てる人なんていないんだから。」


 その視線が、卓に向かって無言で座る優介へと向けられた。

 緑がそっと小江を見上げる。感情の読めないその横顔を、緑は静かに見つめていた。

【獲得称号】

なし

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