夜の報告会
【称号】
二条院優介:助手(無許可)
京山緑:幼女詐欺
ーー夜。
「収穫0!?」
優介は緑の部屋を訪れ、本日の成果を話し合っていた。
優介は、本日の出来事を話し、目を剥いた緑の怒声に、優介は思わず肩をすくめた。
「あなたねぇ…」
腕を組んだまま詰め寄ってくる緑に、優介は両手を軽く上げて言い訳を始める。
「悪かった、悪かったって。」
だが、その程度で緑の怒りは収まらない。
「クリスと探偵ごっこして、ゆみさんと楽しくおしゃべりして、芹香ちゃんとリバーシで遊んで、ここ、ガールズバーかなんかと勘違いしてるんじゃないの?
私にばっか働かせて、いいご身分ね。」
優介は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
「ホント悪かったって…俺にも事情があるんだよ。」
「事情?女の子たちと遊び呆けるのが事情?」
切れ味鋭いツッコミが容赦なく突き刺さる。
「ハーレム気取り?可愛い子ばっか侍らせて羨ましいわね。その割に1番欲しい紅葉の情報がないんだけど?」
優介は返す言葉もなく、ただ頭を掻いた。
そんな優介を見て、緑は呆れたように小さく息を吐く。
「音楽性の違いです。」
「待て、俺が悪かった! 売れないバンドの解散みたいなこと言うなって!」
思わず声を上げた優介に、緑は鼻を鳴らすと、小さく肩をすくめた。
緑は腕を組み、半ば呆れたように言い放った。
「まったく……もう4日目も終わりよ? あなたも本当に危機感持ってくれる? 早い人は銀貨、もう半分を切ってるのよ」
「そうなのか?」
優介が眉をひそめると、緑は頷きながら続ける。
「その辺り、佐伯さんがよく把握してるのよ。完全じゃないけど、ゴミとか食事の動向から、銀貨の枚数を割り出してるの」
「一番少ないのは……真田だろうって」
言葉の終わりと同時に、優介はすぐ次を問う。
「その次に少ないのは誰だ?」
緑は一瞬だけ口を閉ざし、目を逸らした。
「……ょ」
「ん?」
「……私よ」
しぶしぶ絞り出すような声に、優介は驚きの色を浮かべた。
「そんなに使ってるのか」
「悪い? 食べ盛りだし、お腹すくのよ」
頬を膨らませながら言うその顔に、先ほどまでの叱責の勢いはもうない。ほんの少し、年相応の拗ねた子供のように見えた。
「まあ、今日のお詫びに一食ぐらい奢ってやるよ」
そう口にした優介に、緑はそっぽを向いたままだったが――平静を装うその横顔に、微かに浮かぶ嬉しそうな気配を、優介の目は見逃さなかった。
少し間を置いて、優介が話題を切り替える。
「それで、小江の方はどうだったんだ?」
「あなたが思ってた通りよ。白嶺綜律学園の生徒だったわ」
「すごいな……本当に、あいつから聞き出せたのか」
優介の声に、緑は少しだけ得意そうに鼻を鳴らす。
「まあ、多分あれは“あなたには伝わってもいい”って判断だったんだと思う。本当に隠してることは……まだ、聞き出せてないけどね」
緑は少し唇を尖らせながら、優介の顔をじっと見上げる。
「そもそも優介は、小江さんが何を隠してると思ってるの?」
問いかけに、優介は短く息を吐き、視線を少し遠くへと向けた。
「この館について――だな。他にもあるだろうけど……あの学園が関係してるなら、十分あり得る話だ」
「学園ってなんなの……?」
「白嶺綜律学園。正式名称は“ 白嶺綜律高等教育研究院附属第一学園”」
優介の口調が、いつになく静かに、そして確信めいていた。
「表向きは普通の学園だ。ただ、その実態はちょっと違う。ある一部のクラスだけ、“特別な能力を持つ人間”を集めて育成し、研究することを目的として作られている。通称Sクラス。俺もそのひとりだった」
「……あなたが?」
「ああ。……その学園を作ったのは、俺の父親だ」
緑が小さく目を見開くのを見ながら、優介は続けた。
「人を集めて、能力を測って、育てる。その対価に、生徒には相応の“見返り”が用意されている。研究設備や金銭的支援、生活の保障……。見た目だけなら恵まれたエリート集団に見えるだろうな。でも実際はそんな輝かしいもんじゃない。」
その声音には、微かな苦味が滲んでいた。
「特殊な能力を持つ人間ってのは、やっぱり普通の社会じゃ浮くんだ。うまく馴染めずに、苦しんでる奴も多い。だけど――あの学園は、そういう奴らにとって、ほとんど唯一と言っていいぐらいの“居場所”だった」
「まあ、実験動物みたいなこともするし、されるんだけどな。……それでも、おかげで生きていけたやつも、たくさんいたよ」
どこか割り切ったような言い方だった。
優介も自分自身、ここでしか得られなかったものが多くあり、どうしても否定する気にはなれない。
「……そんな風には見えないわね。何なの? その“特殊な能力”って」
「まあ、ピンキリだな。スキルだったり、身体能力だったり……中には、まだ解明できてないような何かを持ってるやつもいる」
緑がじっと目を細める。その視線を受けながら、優介はふっと息を吐き、腰を上げた。
「……いい機会だ。どうせ話そうとは思ってた。緑、お前俺の“手の内”が知りたいって言ってたよな。ちょっと来てくれ」
言いながら、軽く顎でドアの方向を示す。
緑は一瞬、怪訝そうに眉をひそめたが、すぐに無言で立ち上がる。その足取りは警戒と興味半分といった様子で、静かに優介の後に続いた。
【獲得称号】
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