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異世界に行ける可能性は微粒子レベルで存在している  作者: Lemuria


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33/66

迷探偵、反省中

【称号】

二条院優介:助手(無許可)

クリスティアーナ:名探偵(自称)

 ひとしきり推理(?)を語り終えたところで、クリスはふっと肩の力を抜いた。


「……やっぱり、私には探偵は難しいみたいです」


 しょんぼりと呟いた彼女は、胸元の十字架を軽く握り、少しだけうつむいて、目を伏せる。


「うーん……まあ、探偵っていうか、だいぶファンタジーだったような気がするな」


 優介が苦笑まじりに返すと、クリスは微かにむくれた顔を向けた。


「それ、褒めてますか? 貶してますか?」


「7:3で貶してる」


「えぇ……」


 唇を尖らせながらも、クリスの肩が少しだけ揺れた。

 完全にしょげきったわけではなく、どこか照れ隠しのようにも見える。


「ええ。でも、本当に、犯人は見つけなきゃいけないとは思ってるんです。二度と、こんなことが起きてはいけませんから」


 言葉の端ににじむ、クリスの誠実さ。優介は若干躊躇いながらも短く相槌を打つ。


 少しの沈黙のあと、クリスがぽつりと呟いた。


「目撃者とか……いなかったんですか?」


「犯行があったのはだいぶ前だ。意識して見てなきゃ、覚えてないってこともあるだろうな」


 クリスはふと何かを思い出したように、小さく「あ」と声を漏らした。


「そういえば……昨日の夜、緑さんが七番の部屋に入っていくのを見ました」


「……緑が?」


 優介のまぶたがわずかに動いた。


「あの子、六番のはずですから……間違えて入っちゃったのかもしれません。時間も遅かったですし。中を覗いて、驚いたでしょうね……かわいそうに。あの部屋を見たら、怖くならないはずがありません」


 クリスは本気で心配しているらしく、眉を寄せて口元を引き結んだ。

 その一方で、優介の中には別の反応が芽生えていた。


(――あの時か)


 緑が鍵を“戻した”のは、昨夜のことだった。

 誰にも見られていないはずだと、どこかで油断していた。だが、まさかクリスに目撃されていたとは。


 彼女が疑っている様子はない。むしろ逆で、夜中に間違って死体のある部屋に入ってしまった少女を気の毒に思っている。

 けれど――それでも、どこか胸の奥に、ひやりと冷たいものが走る。


「……まあ、夜だったし、あの並びじゃ間違えるのも無理はないよな」


 優介は肩をすくめるように言った。クリスを安心させるつもりだったのか、それとも、自分に言い聞かせていたのかはわからない。


 クリスはその言葉にふっと微笑み、少しだけ頷いた。


「そうですね。……でもあの子も怖い思いをしたかもしれません。今度、私からも声をかけてみますね。」


 優しい声音でそう呟いてから、クリスは改めて優介の方に向き直った。


「私も、もう少し自分で調べてみようと思います。また、お手伝いしてくださいね?」


 そして、ほんのりと意味ありげな笑みを浮かべて――


「入信も、お待ちしてますよ」


「……言うと思った」


 肩を落とした優介をよそに、クリスは嬉しそうにくるりと踵を返す。

 その背中を見送りながら、優介は、ほんの少しだけ表情を引き締めた。

【獲得称号】

なし

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