恋バナ
【称号】
二条院優介:芸能オンチ
天ヶ瀬ゆみ:今日からLUXEファン
竜堂晃:LUXEの中の人
京山緑:テレビっ子幼女
「ここまで来るのも、けっこう大変だしさ。いくつか持ってって、食堂に置いとこうか。」
晃がふと思いついたように提案する。
「……ああ、それもいいかもしれないな。どうせみんな暇してるだろうし。」
優介の言葉に、ゆみも「私たちも運びますね」とにこりと笑い、緑も「緑も手伝う!」と元気よく手を挙げる。
それぞれゲームをいくつか手分けして持ち、四人で食堂へと向かった。
食堂の棚の空いたスペースに、将棋やチェス、リバーシやトランプなどを並べ終えたところで、夕飯を食べていないことに気付く。
「……そういえば、腹減ったな。」
「僕もまだ食べてないなぁ。」
「私たちはもう済ませちゃったので、そろそろ部屋に戻りますね。」
「またね、お兄ちゃん!」
緑がぴょこりとお辞儀して、笑顔で手を振る。
「うん、また。」
優介は軽く手を振り返し、ゆみと緑が連れ立って食堂を後にしたのを見送る。
静かになった食堂に、優介と晃だけが残った。
「……銀貨、部屋に置いてたな。」
優介はぽつりと呟き、ひとまず自分の部屋まで戻ることにした。
改めて食堂へ戻り、自販機の前で銀貨を2つ投げ込む。
しばらくすると、冷凍された幕の内弁当がガコン、と無造作に落ちてきた。
晃も同じように銀貨を投入し、落ちてきた弁当取り出している。
食堂の隅にある電子レンジに弁当を並べて、順番に温める。2日目にもなると手慣れたもので、自然と段取りが進んでいく。
「じゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
二人は向かい合って座り、食堂の棚に大量に備え付けられている割り箸を割って、それぞれの弁当に手を伸ばした。
二人で静かに弁当をつついていると、ふいに晃が軽い調子で話しかけてきた。
「ねえ、優介さんって、恋人とかいるの?」
「……は?」
あまりにも唐突で、優介は思わず箸を止めた。
「いやいや、ただの興味。本当に、ふと気になっただけだよ。」
晃はにこにこと笑いながら、あくまで世間話みたいに続ける。
「……いない。」
「ふーん。じゃあ、好きなタイプは?」
「なんでそんなこと気になるんだよ。」
「いや、こういう時こそさ、そういう話ってちょっと楽しくない? それに……ほら、ここには可愛い子も多いし。」
晃は楽しげに優介の反応を見ている。
「たとえば……クリスちゃんとか?」
「クリスはまあ美人だとは思うけど…。」
「でも、あの綺麗な金髪と透き通った青い目、ちょっと外国映画のヒロインみたいじゃない?」
救護室からの帰り、クリスを部屋まで送って行った際の宗教勧誘責めを思い出す。
「なんていうか、壺とか絵画とか買わされそうでな。」
晃は腹を抱えて笑う。ひとしきり笑い終えたあと次の名前を出してきた。
「そしたらゆみさんとか?」
「ゆみさん?」
「うん。なんかこう、大人の余裕って感じ、しない?」
晃はどこか憧れたように言う。
「落ち着いてて、誰に対しても優しいし、仕草も綺麗だし。俺、ああいう大人になりたいなって思うんだよね。」
「……そうか。」
「え、優介さんはそう思わない?」
「うーん…。」
優介は一瞬、返事をためらった。
昨晩、ここでゆみと2人で食事をしていた時のことを思い出す。
「ゆみさんは…多分依存心が強い。誰かが支えてあげなければいけないタイプじゃないかな。」
晃は目を細めて、少しだけ楽しそうに微笑んだ。
「……へぇ、優介さん、ちゃんと見てるんだね。」
晃は意味ありげに優介を見つめる。
「……なんだよ。」
「ふふ、なんでも。」
「透華さんは……優介さんのタイプじゃなさそうだよね。じゃあ……芹香ちゃんは?ほら、胸、大きいし。」
「……いきなりそこに寄せるのやめろ。」
「いやいや、重要なファクターでしょ? そこを無視するなんて、もったいないよ。」
「何がもったいないんだよ。」
「それとも、逆に小さい方が好みだったりする?」
晃がにやりと口元を緩める。
「たとえば……柊さんとか、わりと小ぶりだよね?」
「……」
「うん、あのくらいがちょうどいい、とか?ほら、あんまり大きいと邪魔そうだし、小さい方がスタイリッシュで――」
「いや、誰もそんな話はしてない。」
「え? じゃあ、まさか……緑ちゃん?優介さんてロリコンだったの?」
晃がわざとらしく目を見開き、口元を手で隠しながら、驚いたふりをする。
「おい、やめろ。冗談でもやめろ。聞こえたら大問題だ。」
「え? 違うの? 胸が無いから?緑ちゃんはこれからだと思うよ。未来に投資、みたいな。」
「投資した瞬間に破産するからごめんだ。」
晃は優介の返しにくすりと笑い、使い終わった割り箸をダストボックスに捨てながら、ひとつ肩をすくめた。
「ま、冗談だけどさ。でもね――」
ひょいと身軽に振り返り、優介に向かって人差し指をぴんと立てる。
「僕を優介さんの恋人候補のひとりに加えといてよ。」
いたずらっぽくウインクし、冗談とも本気ともつかない軽やかさでそう言い放つと、晃は手をひらひらと振りながら食堂を後にする。
「……いや、どういう意味だよ、それ。」
誰に向けるでもなく小さく呟いた優介の声は、静かになった食堂にぽつりと落ちた。
ーーその夜、館の廊下は、夜の静けさに包まれていた。
外の風が、わずかに窓枠を揺らす。響く音は、足音と、吐息だけ。
人影がひとつ、廊下を歩いている。
その足が止まったのは、ナンバー7の扉の前だった。
しばらく、動かない。
ただ、そこに立ち、扉を――見つめている。
照明の落ちた薄闇の中、表情までは見えない。
だが、その肩の沈み方と、拳の震え方から伝わるものがあった。
それは、悲しみ。そして、絶望。
ほんの僅かに手が動いた。
ドアノブに伸びようとして……やめた。
そのとき、廊下の奥から足音が近づいてきた。
ハッとしたように、人影は身を引く。
足音の聞こえる方向とは逆へ、通路の角を曲がり、その陰に身を潜める。
壁越しに気配をうかがう。
視線が交わることはない。顔も、声も、わからない。
もうひとつの人影が現れた。
その人物は、静かに7番の扉の前に立ち、ドアノブに手をかけて――そっと回す。
カチャリ。
しかし、扉は開かない。鍵がかかっている。
扉の前にしばらく立ち尽くし、何かを考えているようだったが、
やがて音もなく踵を返し、来た道を引き返していった。
……再び、廊下に静寂が戻る。
最初の人影は、隠れていた場所からそっと顔を出し、
もう一度だけ、閉ざされた扉を見つめた。
悲しみと、別の何か――
言葉にできない想いが、瞳の奥に揺れていた。
【獲得称号】
竜堂晃:優介狙い ← NEW




