お手柄緑
【称号】
二条院優介:ラスエリ病医学生
天ヶ瀬ゆみ:おっとり系アグレッシブ
竜堂晃:アルビノ優男
京山緑:癒し系幼女
「優介さん、いますか?」
部屋のドアをノックする声が聞こえた。ドアを開けると、そこには天ヶ瀬ゆみが立っていた。
「ゆみさん?どうした?」
「実は……昨日まで開かなかった部屋が、今、開いてるんです。」
「え?」
「緑ちゃんが見つけたんです。晃くんも一緒に外で待ってるんですけど……よかったら、優介さんも一緒に確認しに行きませんか?」
「……わかった。行こう。」
優介は軽く頷き、ドアを閉めて外に出ると、晃と緑が待っていた。二人とも、部屋の前でこちらに気づき、穏やかに手を振る。
「あ、優介さん。来てくれたんだ。」
「あっ、お兄ちゃん! こんばんは!」
晃と緑がそれぞれ穏やかに、嬉しそうに声をかけてくる。
「こんばんは。」
優介も軽く微笑み、二人に挨拶を返した。
「……それで、どこが開いたんだ?」
「救護室とは反対側にある、カードキーで開けられなかった部屋だよ。」
晃が穏やかな声で説明する。
「あの部屋……」
優介は思い出す。クリスのカードキーで開く場所を探しに来た際には、間違いなく施錠されていたことを優介自身がはっきり覚えている。
「緑ちゃんが、館を探検してた時に、扉が開いてるのを見つけたんです。」
隣で、ゆみが付け加える。
落ち着いた声で話しているが、ほんの少しだけ高鳴った鼓動を隠せていないようだった。
「それで、慌てて私に報告しに来てくれて……」
「うん! 本当に開いてたの!」
緑も小さく力強く頷く。
「見間違いとかじゃなくて?」
「ううん、ちゃんとドアが開いてるのみたもん!」
緑は、むぅっと少しだけ頬を膨らませる。
「……そっか。」
優介は軽く息を吐き、三人と一緒にその部屋へと向かった。
廊下を歩いてたどり着いたのは、優介自身も確認した例のカードキー式の部屋。
確かに──扉は、わずかに隙間を開けている。
「……本当に、開いてるな。」
思わずそう口にした。
「それで、中はどうだったんだ?」
優介が尋ねると、ゆみは首を横に振った。
「いえ、緑ちゃんが慌てて知らせに来てくれたので、まだ中は確認していないんです。」
「うん! わたし、すぐゆみお姉ちゃんに言わなきゃって思って……!」
緑が胸を張るように小さく拳を握る。
「……そうか。それなら、入ってみよう。」
優介は扉に手をかけて、ゆっくりと押し開けた。
そのとき、ふと違和感がよぎる。改めて扉の表を確認すると──鍵のシリンダー、つまり通常ならあるはずの鍵穴自体が存在しない。あれ?と思い裏を見てみると、
「……これ、鍵のつまみがない……?」
思わずつぶやいた。
「オートロックってわけじゃないよな? ……鍵、これじゃかからないよな……」
扉を軽く開閉しながら軽く確認する。確かに、ロック機構そのものが存在しない。
「念のため、開放状態のままにしておこう。」
そう言って、優介は扉を固定しながら、慎重に足を踏み入れた。続いて、ゆみ・晃・緑も静かに部屋に入ってくる。
中には想像もしなかった光景が広がっていた。
「……遊戯室?」
優介は思わず声に出していた。
そこには、将棋やチェス、トランプ、リバーシなど、いくつものボードゲームがきれいに棚に収められている。
壁際には、ダイス、バックギャモン、ジェンガのような古典ゲーム。部屋の奥にはキーボードまで置いてあり、電源も入る。ぱっと見コンセントが繋がってるように見えないから内蔵バッテリーによるものだろう。棚には年代物のラジカセ、小ぶりな本棚にはボードゲームのルールブックやいくつかのシリーズものの小説がある。
「遊ぶための部屋、ってことなのかな。」
晃は将棋の駒を手に取り、懐かしそうに指先で転がす。
「お兄ちゃん、これ全部使っていいの?」
「そうだな……まあ、部屋が開いている以上良いんじゃないか?」
優介は軽く室内を一周してから、緑の方を見やった。
「やったー!」
緑は弾むように足を運び、さっそくリバーシの盤を広げ始めた。1人でやるゲームではないのだが。
「さすがにずっとこのままじゃ退屈だったからありがたいね。これもみんなに教えてあげようか。」
晃がそう言いながら、ふと隅に置かれた電子キーボードに目を留めた。晃は興味深そうに電源を入れ、何度か鍵盤を叩いて音を確かめる。
「お、ちゃんと音が出るね。」
軽く指を滑らせ、ポンポンと和音を鳴らしたかと思うと、自然に両手でコードを刻み始めた。あっという間に軽快なメロディを奏で始める。しかも、かなり上手い。
「上手……」
ゆみの呟きが、自然と口をついて出る。
晃は軽く振り返りながら、鍵盤に合わせてさらりと口ずさみ始めた。
流れるのは、どこかで耳にしたことのある、馴染み深いメロディ。聞き覚えのある曲、そして、どこかで何度も聞いたことのある歌声。
「さすがですね。まさかこんなところでLUXEの生演奏を聞けるなんて……友達に自慢できます。」
ゆみが感嘆したように微笑むと、晃はにこっと楽しげに笑い、キーボードを鳴らしたまま振り返った。
「LUXE……?」
聞き慣れない単語に、優介はぽつりと疑問を漏らす。
その瞬間、緑が信じられないものを見たような目でこちらを振り向いた。
「え、お、お兄ちゃん、ホントに知らないの? 緑でも知ってるよ? いっぱいテレビで見たよ?」
テレビ持ってないの?とでも良いたげにじっとこちらを見つめてくる。
その視線に続くように、ゆみまでもが、まるで珍しい生き物でも見るかのように奇妙な目を向けてくる。
「……え、俺、そんなに変なこと言ったか?」
戸惑う優介に、晃は苦笑しながらキーボードの鍵盤を軽く叩いた。
「まあ、いくらアイドルって言ってもさ。別に、誰にでも知られてるわけじゃないしね。」
「自己紹介の時、そんなこと言ってたか?」
「言ってないよ。別に言うほどのことでもないもの。」
晃はあっさりと答え、肩をすくめる。
「でも、多分……みんな気づいてます。」
ゆみが頬に手を添えながらそっと付け加える。
自分だけ知らなかったなんて、非常に失礼なことをしたみたいで、軽い罪悪感を覚える。
優介が何も言えないでいるうちに、晃の演奏は終わりを迎え、最後の音がふわりと遊戯室に溶けて消える。
晃は軽くペコリと頭を下げた。
「ご清聴、ありがとうございました。」
「わあっ……!」「すごかった!」
ゆみと緑はほぼ同時に盛大な拍手を送り、無邪気に笑っている。
優介も、少し遅れてパン、パン、と拍手を重ねた。
晃は照れたように笑いながら、キーボードから手を離す。
「二日も連絡取れてないから、LUXEのみんな、きっと心配してるだろうな。」
晃の何気ない呟きに、優介はふと心のどこかがきゅっと締めつけられるような感覚を覚えた。
ああ、そうだよな……。
ここにいる全員が、家族や友達と、きっと連絡が取れずにいる。
優介の脳裏にも、自然と一人の友人の顔が浮かぶ。
あいつ、俺が急にいなくなったら、絶対めちゃくちゃ心配してるだろうな……。
心配の仕方がだいぶ過剰なタイプだから、今ごろ警察とかに突撃して、無理やり探させてそうだ。
優介はひとり苦笑する。
けれど、不安と寂しさは確かにそこにあって、完全には拭えない。
「ま、戻ったらその分、ちゃんと謝らなきゃね。」
晃はキーボードの電源をゆっくり落としながら笑った。
その軽さに、ほんの少しだけ、優介の胸の重さも和らいだような気がした。
【獲得称号】
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