コイントス
【称号】
二条院優介:ラスエリ病医学生
真田一馬:巻き込まれ召喚説
走って行った小江と入れ替わるようにして現れたのは、真田一馬だった。
「お、いたいた。救護室、見つけたんだってな。クリスちゃんから聞いたぜ。」
開口一番、にやついた顔でこちらに歩み寄ってくる。
「……それがどうかしたのか?」
「ちょっと案内してくれよ。カードキー持ってるのお前なんだろ?」
「は? なんで。」
「救護室なら、アルコールの一本や二本くらい置いてんだろ?」
一瞬、何の話かと思って眉をひそめる。
記憶を探ってみれば、確かに救護室の棚に消毒用アルコールが数本あったことを思い出す。
「……いや、確かにあったけど。それがどうかしたのか?」
「決まってんだろ、それ飲むんだよ。」
「はあ?」
「酒がねぇんだ。だったらそれ飲むしかないだろ。」
平然とした顔で真田は言い切る。
優介は呆れて頭を掻きながら、ひとつため息を吐く。
「だからと言ってそんなもの飲むなよ。佐伯さんは金貨1枚の箱開けたらタバコが入ってたらしいぞ。もしかしたらあんたの箱にも酒が入ってるんじゃないか?」
「なかったから言ってんだよ。」
真田は肩をすくめて、不満げに鼻を鳴らす。
「……何が入ってたんだ?」
「なんでお前にそんなこと言わなきゃいけないんだよ。いいからさっさと連れて行けよ。」
「……救護室の備品はみんなのもんだ。勝手に持ち出していいわけないだろ。」
「おいおい、ケチくせえこと言うなよ。消毒用アルコールくらい、減っても誰も困らねぇって。」
「いや、困るだろ。実際に怪我人が出たらどうすんだよ。」
「じゃあ、怪我しないように気を付ければいいだけの話だろ。」
悪びれもせずに笑う真田に、優介は無言で額を押さえたくなる。話がまるで通じる気がしない。
「じゃあ、賭けるか?」
ふいに、真田がポケットから金貨を一枚取り出した。指の上でくるくると軽快に回しながら、にやりと笑う。
「……賭け?」
「そうだ。これで勝負しようぜ。」
金貨を指先で弾き、ひょいと宙に放ると、再びキャッチして手のひらに乗せて広げてみせる。
「表が出たら、黙って救護室まで連れて行ってもらう。裏が出たら、今回は諦めてやる。」
「はあ……」
ふざけた話だと思いながらも、真田はきっと、言葉だけで引き下がるつもりはない。なら、ここで賭けに乗るしかないのかもしれない。
優介は少し考え、金貨の片面を指差す。
「……表って、こっちの絵柄が書いてある方でいいんだな?」
「ああ。」
「じゃあ、表が出たら諦めろ。」
「裏が出たら、俺が勝ちってことで良いんだな。いくぜ?」
にやりと笑い合い、真田は金貨を高く弾いた。
天井近くまで跳ねた金貨は、くるくると回転しながら落下し、乾いた音を立てて床に転がる。
二人で、金貨の落ちた先を見つめた。
金貨は、裏の模様が書いてある方を上にして、ぴたりと止まっていた。
「……俺の勝ちだな。」
真田が嬉しそうに口角を上げる。
優介は大きくため息を吐き、頭をガシガシと掻いた。
「……分かったよ。さすがに全部は持っていくなよ。」
「おう、まあ一本あればしばらくはもつさ。」
薄い笑みを浮かべ、軽い足取りで真田は救護室の方へ歩き出した。
「……ほら、1本だけだぞ。」
救護室に着き、棚に並んだ消毒用エタノールを確認する。500ミリの透明ボトルに、しっかり「消毒用エタノール」とラベルが貼られている。
優介はボトルを一本取り出し、真田に手渡した。
「お、サンキュー。」
真田は嬉しそうに受け取り、手の中でボトルを軽く持ち上げる。
「なあ、わかってるとは思うけど……そのまま飲むなよ? お前が思ってる以上に危ないからな。」
念を押すと、真田はちらりと優介を見て、ニヤリと笑う。
「成分的には酒と大差ないんだろ。アルコール度数を下げて飲めば問題ないさ。」
どこまで本気なのか分からない。だが、どうやら真田の中ではもう結論が出ているらしい。
「……本当にやめとけよ。」
一応、最後にもう一度そう告げる。
すると真田は、ちゃんと聞いたのかどうかも怪しい様子で手をひらひらと振り、「じゃ、またな」と軽い足取りで救護室を後にした。
その背中を見送りながら、優介は深く、深くため息を吐く。
【獲得称号】
真田一馬:アル中ギャンブラー ←NEW




