箱の中には
【称号】
二条院優介:ラスエリ病医学生
柊小江:国民的アニメの要注意人物
ふと、壁の時計に目をやる。
(もうこんな時間か…)
最低限、佐伯、ゆみ、晃の三人には、救護室のことを伝えておいた方がいいだろう。できれば、他に箱を開けた人がいないかの情報も集めたい。
(……クリスだけが開けたとは限らないしな。)
そう思いながら廊下を歩いていると、曲がり角の先から見知った人影が現れた。
「やっほ、優介くん。」
柊小江が、ひらひらと手を振ってくる。
「クリスちゃんから聞いたよ。救護室、見つけたんだって?」
「……早いな。あいつ、もう広めてんのか。」
「ふふ、彼女、嬉しそうだったからね。」
小江はにこにこと微笑みながら、軽やかに優介に歩み寄る。
「それで、優介くんは箱は開けたの?」
「……まだ開けてない。」
「へえ、開けないんだ。」
「……いずれ開けるさ。」
「ふふ、いずれ、ね。」
小江は楽しげに笑いながら、ひょいと首をかしげた。
「ねえ、優介くんは……何が入ってたら嬉しい? 希望? それとも絶望?」
「……その選択肢はおかしいだろ。」
「怖いの?」
「……いや、別に。」
「うそ。ちょっと怖いでしょ?」
にやりと小江が笑う。
「じゃあお前はどうなんだ。箱、開けたのか?」
「まだよ。」
「怖いのか?」
「ううん、楽しいのよ。」
小江はそう言って、指先をくるくると遊ばせる。
「箱ってね、開けるまでは無限の可能性が詰まってるの。希望かもしれないし、絶望かもしれないし……もしかしたら脱出チケットが入ってるかもしれない。」
「……随分都合のいい話だな。」
「でもね、確定した瞬間、全部の可能性が消えちゃう。残るのは、たったひとつの“答え”だけ。」
小江の声は相変わらず柔らかいのに、不思議とその言葉には微かな冷たさが滲んでいる。
「開けちゃったら、そこが終わり。選べたかもしれない未来も、もう消えちゃう。……それって、ちょっと絶望でしょ?」
「じゃあ、開けないつもりか?」
「ふふ……実はもう、開ける箱は決めてるの。」
小江は優介に一歩近づき、子供のように無邪気に問いかける。
「優介くんもきっとそのうち箱を開けるわ。その時、優介くんの箱には何が入ってると思う?」
「……さあな。お前は何が入ってると思うんだ?」
「そうねぇ……」
小江はひとしきり考え込むふりをしてから、くるりと笑う。
「……ミミックとか?」
「おい。」
「ふふふ、気を付けてね? 箱を開けた瞬間、優介くんの手をガブッ!って食べちゃうかもよ。」
悪戯っぽく目を細める小江に、優介は小さくため息をついた。
「でもね、優介くん。」
「ん?」
「あなた、きっと――」
小江はわざと続きを濁すように、微笑を残したまま背を向ける。
「やっぱり、今は内緒。」
「は?」
「またね。」
ぱたぱたと軽い足音を残して、小江は去っていく。
「……何だよ、きっとって。」
【獲得称号】
柊小江:ミミック提唱者 ←NEW




