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異世界に行ける可能性は微粒子レベルで存在している  作者: Lemuria


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回復アイテム(勧誘付き)

【称号】

二条院優介:ラスエリ病医学生

クリスティアーナ:回復アイテム所持者

 探索を終えた二人は、救護室の無機質な扉を開けて外に出た。


「じゃあ、一応送っていくよ。」 


「ありがとうございます。」


 二人で並んで歩き出しながら、改めて感想を交わす。


「結局私には、ほとんど何も使い方がわからないものばかりでした。」


 クリスはそう言って、申し訳なさそうに笑った。


「十分すぎるくらいの設備だし、これぐらいなら一応俺でも使えそうだ。価値は高い。」


「これ、金貨三枚の箱の中身がこれだったって考えると、当たり箱ですよね。」

 クリスが救護室を振り返りながら、少し嬉しそうに言った。


「でも私だけでは持て余してしまうので…やっぱり優介さんがいてこそです。」


 クリスは、優介を見つめながら小さく笑うと、

 優介は答えに窮して頭を掻く。


「……でも、もし私が箱を開けていなかったら、ここには誰も入れなかったってことなのでしょうか?」


「さぁ、他の誰かの箱にも同じ鍵が入っていたのかもしれないし、何か別のきっかけで救護室が解放された可能性もある。……ただそうじゃなかった場合、かなり運が良かったと思う。」


「神様のおかげでしょうね。」

 クリスはそう言って、少し微笑んだ。


「私は、キリスト教を源流とする宗派のシスターとして教会で暮らしていました。皆様がイメージするキリスト教と違い、教義や風習が少し独特で、神様のあり方も少し違います。たとえば、正教会のような厳格なイメージとは違って、もっと身近で、人間に寄り添う存在として神様を感じているんです。」


 優介は少し首をかしげながらも興味を持って聞いた。


「どういうことだ?」


「神様は遠くて厳しい存在じゃなくて、私たちの日常にそっと寄り添い、時には優しく、時には厳しく導いてくれる存在なんです。だから、起こることにはすべて意味があると信じています。」


 いきなり金貨を全部使うなんて、ずいぶん大胆なのか考え無しなのかと思っていたけど……なるほど、神様に導かれていると考えるなら不思議なことでもないかもしれないな。


 優介はそんな思いを胸に抱きつつ、問いかける。


「なるほど、だから二条院って名前を聞いても、特に何とも思わないんだな。」


 クリスは静かに頷いた。

「神様のお導きですから。」


 優介はふっと息をつく。


「そうか……俺のフルネームが書かれた紙が入っていたこともあったし、そう言ってくれる人がいるなら、偽名を使わなくてよかったのかもな。」


 その一言を聞いた瞬間、クリスの足がぴたりと止まった。


「……嘘はダメですよ。」


 優介も思わず立ち止まる。


「え?」


 振り返ると、クリスはさっきまで柔らかく慈愛に満ちた笑みは音もなく消え去り、その代わりに冷徹な氷のような視線が優介を鋭く射抜く。


「嘘は、他人をひどく傷つける行為です。」


 言葉は静かだが、放たれる冷気は鋭く、凍りつくような威圧感を持っていた。


 優介は言葉を失い、ただ「あ、ああ……わかった」とだけ答えた。


 それ以上は何も言えなかった。


 しばらくの沈黙の後、クリスの表情がゆっくりと柔らかくなり、優しく微笑んだ。


「理解してくれて、良かったです。」


 その笑みは先ほどの冷徹さを忘れさせるほど温かく、まるで救いを求める者に差し伸べる手のようだった。



「これ、良かったら優介さんが持っていてくれませんか?」


 部屋の前に着くと、クリスはそう言って、優介にカードキーを差し出した。


「え、でも……それ、クリスの宝箱の中身なんだろ? いいのか?」


「私が持っていても、お役に立てませんから。」


 クリスは柔らかく微笑む。

 その笑顔は本当に清々しくて、疑いようもない善意に見える。


「あ、でも――」

 クリスがふっと顔を上げ、ぱっと満面の笑みに切り替わる。


「その代わりに……入信、考えてみませんか?」


「……え?」


「私たちの教え、本当に素敵なんです。」


 一歩、詰めてくる。


「神様はいつでも近くにいて、私たちを優しく導いてくれるんです。怒ることもありますけど、それは全部、私たちのためなんですよ?」


 さらにもう一歩、じわりと距離を詰められる。


「入信って、そんなに重いことじゃないんです。心の中で、あ、神様いるかも、って思ってくれるだけで、まずは大丈夫ですから。神様は待ってくれます。でも、きっと優介さんならすぐにわかってくれると思うんです。」


 さらにもう一歩距離を詰められ、反発するように一歩後ずさった優介の背中に壁が当たる。


「私たちの教え、本当に素敵なんです。神様はね、いつでも近くにいて、私たちを見守ってくれるんですよ。厳しくも優しい、そんな温かい存在なんです。何か辛いことがあった時も、神様に祈ればきっと力を貸してくれるし――」


 クリスは楽しそうに、夢中で教えの素晴らしさを語り続ける。目は輝き、声は弾み、その姿はまるで子どもが大好きなものを語る時のようだった。


(やばい、めっちゃ楽しそうに語ってる……断りづら……)


「え、あー、まあ、うん……考えとくよ。すごく……よさそう、だし……?」


「本当ですか!?」

 クリスが食い気味に答え、ぱっと顔を輝かせる。


「いや、えっと、まずはちゃんと話を聞いてからだな、うん……今は、ほら、他にもいろいろやることがあるし……」


 優介は曖昧な笑みを浮かべながら、じりじりと距離を取っていく。


「じゃ、じゃあまた今度ゆっくり……!」


「あっ、はい、ぜひ! その時は詳しくお話しますね!」


 クリスは満面の笑みで手を振る。優介は内心で冷や汗をかき、これ以上話を聞いたら逃げられなくなると悟り、足早にその場を離れた。






自室に戻ると、優介は静かに扉を閉めた。


「……ふぅ。」


ようやく人心地ついた。


ベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。


(救護室、か……。)


あの部屋の存在は、皆に共有すべき情報だろう。俺たちだけが知っているには、あまりに重要すぎる。


(他にも、箱を開けたやつがいるかもしれないな。)


もし他の誰かが、別の鍵を手に入れていたら。

もし他の部屋にも、救護室以外の“何か”が隠されているとしたら――


脱出への手掛かりになる可能性はある。


優介の知る限り、これまでに開けられた箱は二つ。

佐伯の一枚箱と、クリスの三枚箱。


(情報が必要だな……。)


【獲得称号】

クリスティアーナ:宗教ガチ勢 ← NEW

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