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ダンジョン「地球」の管理者は、人生二度目の天使さま。  作者: 伊里諏倫
つながる世界

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天使様、皮算用する

 母星での用事を済ませた俺は、一泊した後、地球へとんぼ返りしていた。

 フクレに手伝ってもらって、ダンジョンの配信機能も既に実装直前というところまで来ている。


 配信サイトの名前は、ちゃちだが「D-Live」にするつもりだ。

 今後、日本以外のダンジョンでも配信が行えるようにすることを考えて、アルファベットかつシンプルなものがいいと判断した。


 この「D-live」、ぱっと見は普通の配信サイトなんだが、コメントをリアルタイムで翻訳してくれたり、グロテスクな見た目のモンスターにフィルターをかけることができたりと、様々な工夫を凝らしている。先進文明さまさまだ。

 どうせなら、いろんな層の人間に見てもらいたいしな。


 それからアクセスも簡単にして、インターネットにさえ接続できれば誰でも見られるようにした。地球の通信網に乗っかる形で霊子ネットワークへ繋がせるのだ。



 ――ここまでは、配信を見る側についての話。


 一方の配信する側についてだが……。



 探索者がダンジョンに入ると、まず傍にドローンカメラが現れる。モノアイの空飛ぶ球体みたいなシロモノだ。それが探索者に自動で追従して映像を撮ってくれる。ソロじゃなくパーティーならパーティーに一台カメラがつく。

 そのうえで配信をつけるどうかは任意に選んでもらうことにした。


 あくまで強制はしない。今攻略の最前線を走っている探索者たちは、ライバルに情報が筒抜けになることを快く思わないだろう。モンスターの弱点や採取スポットの有無はそれだけで金になる。単純に映るのが嫌って人もいるはずだ。


 最も、ほとんどの探索者は配信をつけることになるだろうが……。

 そう考えるには理由がある。



「渡りに船とはこのことですね」



 ロゼリア号、食堂兼リビング。その壁に映し出した日本のニュース番組を眺めて、俺はぽつりと呟いた。


 日本のダンジョン――東京摩天楼では、閉鎖空間であることを悪用したトラブルがたまに起きているらしい。ドロップ品を巡っていざこざを起こしたり、怨恨から特定の探索者を付け狙ったり。被害者が声を上げても証拠となるボディカメラを壊されていたらどうしようもない。泣き寝入りだ。


 そんなダンジョン内の治安問題について、総理大臣が啖呵を切ったらしい。

 曰く一週間以内に解決手段を打ち出せなければ、職を辞する覚悟だと。


『……と言いますと?』


 俺の隣で同じようにニュースを見ていたフクレがこてん、と首を傾げる。


「もともと配信機能はテストとして東京摩天楼だけに実装する予定でした。ただ明らかに前回のアップデートとは毛色が異なる。回りまわってダンジョンの活性化につながりますが、短期的に見ると遊興目的で追加したようにも捉えられかねない。けれどダンジョンの不透明性について取り沙汰されている、今この瞬間ならば……」


『その閉塞感を打ち破るために改良したと思われるわけデスか』


「しかも当初の想定より多くの探索者に利用される可能性があります。国が防犯目的として配信を強制するかもしれません」


 たった一週間ちょっと地球を離れていただけで、驚きの進展だ。

 よっぽど今の総理がやり手なんだろう。あのおっちゃんが一体どんな方策を考えているのかは知らないが、その思惑にタダ乗りさせてもらおう。


「報道によると、総理は明日ダンジョンの視察に訪れるようです。これは好機ですよ」


 何となくの手持無沙汰を解消するため、フクレを膝に乗せる。


「配信サイトの宣伝もしなければと思っていましたが、手間が省けました。記念すべき東京摩天楼の配信第一号は――」


 今日の午後に行われたという国会中継。その映像で熱弁を振るう、くたびれた男の顔を見て、俺は笑った。



「――浦梅総理のダンジョン探訪で決まりです!」



 間違いなく、これ以上の同時接続(しちょうりつ)が取れるネタはないだろう。

 あるとすれば俺が出演するくらいか?

 総理にゃ悪いが、あんたの助けにもなるはずだから恨まないでくれよな。


 そうと決まれば、明日の配信に向けて()()()をしなくちゃ……。


『レグ様、暑いです』


 健気な従者の言葉は右から左へ抜けていき、俺は頭の中で一本の台本を書きあげていくのであった。


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― 新着の感想 ―
D-Liveかあ 思いついたのはサンデーの漫画だなあ
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