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戦国再臨録〜祖父が武将の魂を蘇らせたので、俺が鎮めます。〜  作者: あると。
浅井長政編

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24/25

いざ、勝負!!

信長に向けた拳は、呆気なく防がれてしまった。

けれど、拳に伝わった反動を受け止めたことで、確信した。


素手でも力を上手く使えば武器相手でも戦える。


以前、村上との戦いで振り払ったことが

あったけど、あの時は俺が力を制御できず、

無意識に発動したものだ。


でも今は違う。

刀が俺の拳に当たっても痛くない。

これなら俺も戦える!



「ほう……この刀でも切れないか」



何故か感心した様子で、

青白い炎を凝視してくる信長。



「見せもんじゃないんだよ!!」



信長が仕掛けてくる前にすかさず拳を振った。


ガキィィィンッ


また防がれたっ!

信長の反射速度が速すぎる…。

次の手を打とうとした時、異変が起きた。


スゥッ


信長の刀に取り憑いていた亡霊たちが

俺の力の影響を受け、引き剥がされるように、

一体、また一体と刀から離れていったのだ。



「……っ」



さすがの信長もこれには驚いたようで、

急に距離を取り出した。

そして刀を軽く振り、取り憑いていた亡霊が

消えた刃を一瞥する。



「なるほど……これが」



亡者たちが消えて焦るどころか、

なぜか楽しそうに笑みを浮かべる信長。

気味が悪いのと同時に、

ゾクッと背筋が凍るような寒気を感じた。



「面白い。もっと見せてみろ」


「…くるぞ陽介。用意はよいな?」


「あぁ。いつでも行ける」



構える信長が一呼吸置いた次の瞬間、

視界から突然姿を消した。


焦るな…ここで動揺したら終わるぞっ


力が途切れないように意識を右手の拳に集中させ、

信長の攻撃を待った。



「ーー左だっ!」



清正の耳がピクリと反応し、

すかさず左に身体を向ける。


そこには既に刀を振り上げ、

斬りかかろうとする信長がいた。


早いっ…でも間に合う!



「いまだ!!」



シューーーッ

俺の合図とともに大量の白い煙が周囲を覆った。

よし、上手くいった!

俺は急いでその場を離れて、”指定の位置”へ向かった。



「煙幕か…」



周囲を見渡し、陽介がいた場所へ軽く刀を

振り下ろしてみるものの、カチンッと

コンクリートに刃先が当たる音が鳴った。



「周囲に小僧の気配がない…逃げるだけにしては浅いな。となると、次の策のための目くらましかーー」



派手に暴れるわけでもなく、

次の陽介の行動を予想していたその時ーー


タッ——


煙の向こうで、確かな足音が鳴った。

信長は反射的に踏み込み、刀を横薙ぎに振るう。


ブンッ


けれどそこには誰もいない。

残ったのは目の前の白煙を斬った感触だけ…



「……おらぬか」



その直後、今度は背後から足音が聞こえた。


タッ、タッ、タッ……


次は右に、そして左にと、

足音は次第に信長の周りを囲うように、

同じ速さ、同じ重さ、同じ距離感で迫ってきていた。



「なるほど、次は”音”か。面白いやり方だが、いい加減飽きてきた。」



すると信長は刀を片手で引き寄せ、

一瞬だけ肩を落とすと、腰の回転とともに

刀を横へ大きく振り抜いた。


ブンッ——


一瞬で空気が裂け、地面すれすれを薙ぐ斬撃が走った。


バキィィィンッ!!


次の瞬間、甲高い悲鳴のような音が弾けた。



「やべぇ、機材が壊された!」


「…ほう」



斬撃の先にあったのは音響機材。

白煙の中で足音を鳴らしていたのは、

この音響機材だった。


信長の斬撃が直撃し、機材は破壊され、

その側にいたスタッフ達が慌てて逃げ出す。



「先程の足音は、お主らの仕業だったか。」


「まずい、逃げろ逃げろ!」



逃げ出すスタッフ達を横目に、

破壊した音響機材に近づくと、

その機体をひと撫でした。



「この箱であの音を出していたのか…これは使えそうだな。」


「感心してる場合かよ。」


「っ!」



ドスッーー!


その時、今まで身を隠していた陽介が

音響機材に意識を向けたその刹那、

信長の背後を取り――

振り上げた拳を、左脇腹へ思い切り叩き込んだ。



「よくやったぞ、陽介!」


「よしっ!……って、これどうやって止めるの!?」



速度が落ちない。

身体が宙に引き戻され、

ワイヤーが限界まで張り詰める。


——やばっ……!



「来るぞ!受け止めろ!」



誰かの叫び声と同時に、ワイヤーに引かれた身体が

勢いよく戻される。伸び切る直前、数人のスタッフが

一斉に腕を伸ばし、俺の身体を抱え込むように受け止めた。



「た、助かった…」



白煙が出ていた間、俺たちは指定の位置へ走った。

それは3階建てのオフィスビル。



「待ってたぞ、早くこっちに!」



エレベーターで最上階に行くと、

既にスタッフさん達が待機していた。



「お願いします!」



俺が駆け寄ると慣れた手つきで

身体にハーネスを装着していく。

そして、簡易的に作られたワイヤーにフックをかけた。

ワイヤーの先は反対にあるビルの1階。


そう、俺たちの次の手は、ワイヤーアクション作戦。

煙と音で視界と感覚を奪い、

その隙に、吊るされた俺が懐へ飛び込む。


この案はスタッフさん達があの作戦会議で考案したものだ。


準備を終えて、信長の様子を観察している間、

俺の心臓がうるさく鳴っていた。


ここから飛び降りるんだ…


勢いで装着したけれど、身体が強ばり少し手が震える。

その時、近くにいたスタッフの1人がポンと肩に手を置いた。



「正直、少ない機材で用意した手作りのワイヤーだから、安全の保証はない……。でもな、今あるもんでできる最高の仕事はした。

行けるかどうかは――お前次第だ。」



声をかけてくれたのは、あの公園で俺に指をさして

声を上げていた50代くらいのスタッフだった。



「あの時は、すまなかったな……。

俺には娘がいてな、もうすぐ孫も生まれる。

だから、こんなところで死ぬ訳にはいかねぇ。

……なのに、その苛立ちを子供にぶつけた。

間違ってたよ。お前は怖ぇはずなのに、

それでも誰かのために立ってるんだろ。

ならよ、その不安が少しでも軽くなるように、

非力でも手伝わせてくれ。……頑張れ」


「……っはい!」



目頭が熱くなるのをグッと堪え、

一呼吸してから飛ぶタイミングを伺った。


白煙を断ち切り、音響機材を破壊した信長の

背中がガラ空きになった瞬間、

俺は勢いよく窓から飛び出した。



「よくやった!大したもんだ!」


「…信長は!?」



そして今、無事に作戦を成功させた俺は

スタッフ達の歓声を浴びながら、急いで外に出た。



「まさか…空から奇襲とはな」



そこには脇腹を押さえながら

刀で体重を支える信長が立っていた。


あの攻撃でまだ立てるのかよ!

でもーーー



「長政が味わった痛み、お前に返すよ」



殴った時、鈍い感触と信長の身体の中から

骨が折れる音が聞こえた。

ついに信長に一撃食らわせることができたんだ。

あとは、あいつの魂を俺の力で鎮めるんだ!



「はは…笑わせる。だが、気に入ったぞ小僧。」



地面に刺した刀を引っこ抜き、

その矛先を俺に向けてきた。



「陽介と言ったか?次はどんな戦い方をするんだ。俺に全て見せてみろ。」



信長はあちこち怪我をしていても、

まるで子供のような笑顔で

この戦いを楽しんでいるように見えた。


狂ってんだろ。これが戦闘狂ってやつなのか……?



「まぁ…まだ死にたくはないからな。俺は俺なりの戦いで全力でやらせてもらうぞ。」



そう言って再び右手の拳に力を込める。



「はぁ、はぁ……」



さっき思い切り打ち込んだせいで

身体に疲労がきていた。


けれど、ここであいつを倒さないと

俺やここにいる人たちみんなやられてしまう。



「いけるか、陽介」


「あぁ、大丈夫だ!」



絶対勝つ。

俺は拳にもう一度力を込めてから、

全速力で走った。



「……正面か」


「うおぉぉ!!」



真っ直ぐ走ってくる俺を、

意外そうな表情で見据える信長。

けれど、フッと笑うと刀を取り、

向かってくる俺を静かに待ち受けた。



「来いっ」


「あぁ、でも悪いな!ちょっとズルさせてもらうぞ!」



バッ!!


次の瞬間、俺の数メートル後ろで

待機していた照明が一斉に点灯した。



「……まだ残っていたかっ」



もろに強い光を見てしまった信長は

急いで袖で光を遮った。


卑怯だって自分でもわかっている

けれど、格上の相手に対して

これが今の俺にできる唯一の戦い方なんだ。


信長との距離まであと数歩まできたとき、

追い打ちをかけるように、さらに力を込めた。



「いけ!陽介!」


「やっちまえ!」


「陽介、頑張れ!!!」



次々と聞こえてくる声援。

みんなのおかげでここまで信長を

追い詰めることが出来たんだ。


あとは、俺が信長を鎮める!!



「行くぞ!還魂ノーーー」


「ちょっと失礼」


「「「!!」」」



誰だ?いつの間に俺の後ろに……!?

背後から聞こえた声に動揺し、

俺は思わず振り向いた。



「失せよ…」



その言葉を聞いた瞬間、

巨大な棒で横殴りにされたような衝撃が走り、

ぐわんっと身体がくの字に折れ、そのまま吹き飛ばされた。


ドカーーーンッ!!



「くっ……」



なんだ?何が起きた?

俺、なんで倒れてるんだよ?

吹き飛ばされた衝撃で頭の中で混乱し、

身体中には激痛が走った。



「陽介……無事か?」



清正もさっきの衝撃で肩から落ちてしまい、

足を怪我してしまったようだった。



「やれやれ……無様だな」


「!?」



恐る恐る顔を上げてみると、

薄汚い灰色のローブを纏った

一人の老人が目の前で浮いていた。



「初めて君を目にした時は驚いた……まさか、こんな子供が”あの男”と同じ力を使えるなんてな。だが……思うてた以上に、大したことはなさそうだ。」



さっきからこのじいさんは何を言ってるんだ……?

俺を誰かと間違えているんじゃ――


いや、そんなことより。

せっかく信長を倒すチャンスを、横から妨害されたんだ。

こいつは……信長の仲間かもしれない。

なんとか態勢を立て直して、このじいさんをどうにかしないと。


バシッーー



「えっ」


「無駄だ。お主の背中に封縛(ふうばく)を施した呪符を貼り付けた。暫くは動けまい。」


「いつ…の間にっ!」



なんとか腕や足を動かそうと試みたけれど

ビクともしない。それどころか、

力を何度も使ったせいで、頭がクラクラする。



「くくくくっ…惨めだなぁ。同じ力を授かってもこうも違うとは、これは傑作よ。」



俺を蔑む目で見ながら笑うじじい。

くそっ……動けよ俺の身体っ!



「寛仁……貴様、何のつもりだ」



すると、寛仁と呼ばれたじじいに

信長が不服そうな顔で睨んでいた。

なんだ…?仲間じゃないのか?



「これはこれは信長様、ご無事で何より……」


「貴様の助けを乞うた覚えはないぞ。」


「申し訳ございません。しかしながら、貴方様のようなお方が、このような小僧に手を煩わせる必要はありませぬ。」


「なに?」



寛仁と呼ばれたじじいは、腰を低くしながら

フードの中に手を入れる。

そこから出てきたのは悪趣味なデザインをした

一本の小刀。



「何をするつもりだ。」


「無論、この寛仁がトドメをさすのです。」


「いらん。そいつの相手はこの俺だ。邪魔をするな。」


「私はねぇ、昔からず〜〜っとある男を妬んでいたんですよ」



そう言って、寛仁の視線が再び俺に向けられた。

なんだよ……まじでこいつの言ってることが分からないんだけど。



「その男は私と幼き頃からの顔馴染みでな、共に術師をしておった。

当時の私は、それなりに名も知られ、依頼も絶えぬ身だった。

それに比べてあやつは――

目立たず、媚びず、名を売る気も、地位を得る気もない、何とも情けない男だと思っておった。

だが……人々は、そんなあやつを放ってはおかなかった。

それだけじゃない……あの男は、私以上の力を持っておった。

それは”あの時代”では三本の指に入るほどの強大な力だ。

私は……気がつけば、人望も力も、全てをあの男に越されていた」



小刀を握る手が小刻みに震え、

幼馴染と言っていた男の話をすればするほど

声が辛そうに、そして悔しそうに歯を噛み締めていた。



「それはもう憎みましたよ。何故あんな間抜けが私より上なのか……何故っ!私に無いものをあの男が持っているのか!!!」



感情が昂り、声を荒らげ、白く細い手からは血管が浮いていた。

そして、フードの中に手を当てると、

突然頭をかきむしりながら怒りを露わにした。



「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましいーー!……だが、今は違う。」



発狂寸前まであった怒りがフッと一瞬で

正気になり、今度は何故かくくくっと

面白おかしく笑いだした。



「今、お前は私の下にいる!!何も出来ず、力も弱い!私はついに……お前に勝ったのだ!!」



……こいつ、完全に壊れてる。

メンヘラとかそういう次元じゃない。

普通に、怖い。


この精神状態じゃ、何をしてくるか分からない。

早く背中の呪符を取りたいんだけど……っ取れない!



「無駄だと言っておるだろ〜?さて、そろそろ終いにしよう。」


「ふざけんなっ!人違いにも程がある。こんな事で死んでたまるかよ!!」


「お〜お〜よく吠えとる。なぁ覚えておるか?お前が私に話した”アレ”を」


「なんだよ”アレ”って!!」



寛仁はニヤつきながら、俺から離れると

なぜか清正の方に向かって歩き出した。


何をするつもりだ……?



「何者だ……貴様。陽介に手を出してみろ、私が許さんぞっ!」



清正は威嚇しながら怪我した足で

地面を張って俺の所へ来ようとしていた。


それを妨害するかのように寛仁が目の前に立ち、

ぐるんと顔だけ俺の方へ向けた。



「お前は私にこう言った。もし目の前で罪人が現れ、そのせいで“誰か一人が確実に死ぬ”と分かっていたら、お前はどうする?と。」


「なに…言ってんだよ!」



なんだ、嫌な予感がする。

寛仁の狂気じみた笑顔に呼吸が浅くなり、

握る手は手汗がじんわりと伝わった。



「私はこう答えた。時と場合による。と……だが、お前は違った。お前はな?」



答えを聞こうとした次の瞬間ーー


ザシュッ!!!

肉を裂く嫌な音が響き、

清正の身体が大きく揺れた。



「ぐぁっ!」


「迷わず自らが犠牲となって皆を救う……と」



寛仁が持っていた小刀で清正を切りつけた。



「清正ぁぁぁぁあ!!!」



清正が……清正、そんな……どうして

倒れる清正から流れる赤い血が

俺をさらに絶望へと陥れる。


それを見た寛仁が大声で笑い、

小刀を指先で遊ばせながらこちらに近づいてきた。



「かっかっかっかっか〜!その顔が見たかったのだ!お前のその希望を失った顔を!なぁ…教えてくれ。お主は正義のために、誰を犠牲にできる?さぁ、さぁ、さぁぁぁぁ!!!」



言葉が出なかった。

俺は……俺には何が正解なのか分からない。

清正、なぁ……清正。死なないよな?

まだ生きているよな?

頼むから、動いてくれよ……



「可哀想に…あの生き物がそんなに大事だったのだな。ならば、共にあの世へ連れてってやろう」



正気を無くした俺を見て、

満足そうな顔で見下ろしてくる寛仁。

そして小刀を手に、俺の心臓を目掛けて

一気に振り下ろした。



「死ねえぇぇぇぇえええ!!!」



清正……ごめん。

何も出来なくて、ごめんな。

俺はそっと目を瞑って、死を覚悟した。


ズシャーーッ!!



「なっ!?」



……寛仁の驚いた声が聞こえる。

それなのに、身体が痛くない。

いつまで待っても、刺されたはずの痛みが来ない。

――どういうことだ?


俺は瞑った目を恐る恐る開いた。

その視界に映ったのはーー



「長…政?」


「陽介、くん……かはっ!」



怪我だらけの長政が俺を庇うように立ち、

左胸には小刀が刺されていた。



「あ、あぁ…あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」




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